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債権とは、大陸法系の私法上の概念で、ある者が特定の者に対して一定の行為を要求することを内容とする権利になります。
◆債権の概念
ある者(債権者)が特定の相手方(債務者)に対して一定の行為(給付)をするよう要求できる権利をいいます。現代の日本語では一般的ではにあが、「人に対する権利」という意味で「人権」ともいい、旧民法では主としてこの用語が用いられていた。
債務者の側から見た場合は、これは債権者に対する義務であり、債務と呼ばれる。また、債権者と債務者のこのような法律関係のことを、債権債務関係という。いずれも、視点が異なるのみで、内容を異にするものではない。日本では、「債権」という言い方が通常で、「債権債務関係」はあまり用いられないが、欧米では「債権債務関係」に相当する表現がむしろ通常である。
◆日本法
◎債権の本質
債権は、物権と同じく財産法ではあるが、以下の点で物権とは異なる。
◇物権は、物の支配を目的とする権利である(物権の直接性、物権の対世性)が、債権は債務者の行為(給付)を目的とするものである(債権の対人性)。
債権の対人性のコロラリーとして「売買は賃貸を破る」がある。すなわち、例えば、所有者によって、目的物が譲渡された場合を比べると、地上権者は新所有者に対しても地上権を主張できる(継続して利用できる。)が、賃借人は新所有者に対して賃借権を主張できない(継続して利用できない。)。もっとも、不動産賃借権や船舶賃借権については、民法、商法、及び借地借家法においてこの重大な例外が規定されており、一定の対抗要件を具備することにより新所有者にも対抗することができるようになっている。いわゆる「債権の物権化」と呼ばれる現象である。
◇相互に矛盾する同内容の物権は併存しえないが(物権の排他性)、相互に矛盾する同内容の債権は併存しうる。
例えば、同じ土地について建物所有目的の地上権を二重に設定することはできないが、建物所有目的の賃借権を二重に設定することは可能である(後者は、債務不履行責任によって解決される。)。
◆債権の分類
◎発生原因による分類
現在の日本の民法においては、民法第3編債権において、その発生原因として、契約、事務管理、不当利得及び不法行為の4つを規定している。当事者間の合意により発生する債権を約定債権といい、契約による債権がこれに属する。一方、法律の規約によって生じる債権を法定債権といい、事務管理、不当利得、不法行為による債権がこれに属する。
◆債権の効力
◎債権の一般的効力
債権には、一般に以下のような効力があるとされる。
◇給付保持力
債権者の履行による給付を保持しても不当利得とはならない効力。債権の必要最小限の効力とされる。
◇訴求力
訴訟手続で債権を実体法上の権利として確認できる効力
◇執行力
確定判決を債務名義に執行しうる効力
◇貫徹力
債権の内容について、本来の給付そのままに強制的に実現する効力
◇掴取力
債権の内容について、債務者の財産の差押えとその換価という形で実現する効力。
◎債権の効力と責任
効力が不完全な債権、債務と責任とが分離される特殊な債権の形態も存在する。
◇自然債務
給付保持力のみの債務。
◇責任なき債務
給付保持力や訴求力はあるが、執行力のない債権。例として強制執行はしないとの内容の特約を付した債権がこれにあたる。
◇債務なき責任
債務はないが自らの財産が債務の引き当てとなっている場合。例として物上保証人や抵当不動産の第三取得者がこの場合となる。
◆債権者代位権と詐害行為取消権
債務者の責任財産を保全するために、民法は債権者代位権と詐害行為取消権を認めました。
◆債権者代位権
債権者は自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を自ら行使することができる。ただし、債務者の一身専属権については行使できない。
◆詐害行為取消権(債権者取消権)
債権者は、原則として債務者が債権者を害することを知ってした法律行為(詐害行為)の取消しを裁判者に請求することができる。
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◆債権債務の共同帰属
債権者あるいは債務者は複数である場合もあり、物権における共同所有関係(共有、総有、合有】類似の関係に分析される。
◆多数当事者の債権債務
準共有について定める264条本文は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する」とし、本来であれば債権も「所有権以外の財産権」として準共有が成立するが、金銭の給付などに共有物分割規定を準用するのは煩雑であることなどから、民法は多数当事者の債権債務関係については民法第3編第1章総則第3節の多数当事者の債権債務の規定を置かれている。
◎分割債権及び分割債務
多数当事者の債権関係における原則的形態。分割された債権や債務は相互に独立したものと扱われる。
◇分割債権
1つの可分な給付を目的とする債権を複数の債権者が有する場合をいう。例えば、金銭債権が共同相続された場合(分割債権)や共同売却代金(分割債権)などが考えられる。
◇分割債務
1つの可分な給付を目的とする債務を複数の債務者が負う場合をいう。分割債務とされると債権の効力が弱まることから、学説上分割債務の成立を限定して解する見解がある。例えば、金銭債務の共同相続の場合や共同購入者の負う代金支払債務などにつき争いがある。
◇不可分債権及び不可分債務
◇不可分債権
◇不可分債務
◇連帯債権及び連帯債務
◇連帯債権
連帯債権についての規定は必要性が貧しいとして、民法上に規定は設けられていない。
◇連来債務
◇保証債務
◇単純保証
◇連帯保証
◇共同保証
◇貸金等根保証契約
◆債権の移転
債権の移転原因には、次のようなものがある。
◎契約による移転
◇債権譲渡(営業譲渡および事業譲渡による場合を含む。)
歴史的には、債権譲渡(債権者の変更)は、債権の本質に反するという考え方も根強く存在していたものの、近代以降においては、債権譲渡自由の原則が強調されるようになった。日本においても、債権の自由譲渡を認めない慣例が存在したとされ、当初は債権譲渡自由の原則に対する抵抗が強かったものの(民法典論争)、特約により譲渡性を排除できる規定を設けるという形で妥協がなされ、現在に受け継がれている。現在の日本民法においては、民法第3編第1章総則第4節で規定される。
◇債務引受
◇契約上の地位の移転(契約引受)
◎単独行為による移転
◇遺言
◎法律の規定による移転
◇損害賠償による代位
◇第三者弁済による法定代位
◇相続
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◆債権の消滅
債権の消滅原因には、次のようなものがある。
◎目的消滅による債権の消滅
◇目的到達による債権の消滅
◇弁済
弁済(履行)におって債権は消滅する。第三者弁済、担保権実行、強制執行なども含め、すべて目的到達として債権は消滅する。
◇代物弁済
債務者が債権者の承諾を得て、その負担する本来の給付に代えて他の給付をした場合(代物弁済)には弁済に準じ、債権は消滅する。
◇供託
債権者が弁済について受領拒絶、受領不能のときは、弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託することができ、この場合には弁済に準じ債権者は消滅する。なお、弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも供託しうる。
◇目的到達不能による債権の消滅
債務者の責めに帰すべからざる事由による履行不能(危険負担)がこれにあたる。なお、債務者の責めに帰すべき事由による履行不能場合、債務不履行による損害賠償という形に変わって債権は存在することになり、債権は消滅しない。
◇目的消滅以外の債権の消滅
◇相殺
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者はその対当額について相殺によってその債務を消滅させることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは総裁は認められない。
◇更改
当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは旧債権は消滅する。
◇免除
債権者が債務者に対して債務を免除する意志表示をしたときは債権は消滅する。
◇混同
債権及び債務が同一人に帰属した場合には債権は消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは消滅しない。
◇権利の一般的消滅原因による債権の消滅
法律行為の取消し、消滅時効、終期の到来、解除条件の成就、契約の解除、合意解除(反対契約)など権利一般の消滅原因によっても債権は消滅する。
以上の消滅原因のうち弁済(代物弁済、供託)、相殺、更改、免除、混同については、民法代3編第1章総則第5節で規定される。