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株式会社は、数多くの人からお金を集めて、大きな商売をするための
仕組みです。
そのために多数の人が出資をしやすいような工夫がされています。
会社の実質的所有者である社員、すなわち株主の地位は、
細かく分けられた均一な割合的単位の形をとっています。
これを株式と言います。
出資者は、たとえば、お金があまりないから、10株分の出資をするとか、
資金に余裕があるから100株分の出資をするというように、
株式を自分が持っている資金の大きさ(資力)に応じた数だけ引き受けて、
出資することができます。
つまり、株式をたくさん買えば買うほど大きな株主になれるということです。
◆株主の権利
◎自益権と共益権
株式会社における株主の有する権利は、大きく自益権と共益権とに
分けることができます。
株主は、一般に、自分が投資した会社から経済的利益の分配を受けることを
望みます。
株主が出資者として会社から経済的利益を受けることを目的とする権利を
自益権と言います。
また、株主は、会社がより効率的に事業活動をするように、
経営の基本となる重要事項を決める権利も持っています。
株主が会社の管理運営に参加することを目的とする権利を共益権と
言います。
◇株主の権利
◇自益権
◇剰余金の配当を受ける権利
◇残余財産の分配を受ける権利
◇共益権
◇株主総会における議決権
これらの権利のうち、剰余金の配当を受ける権利と残余財産の分配を
受ける権利については、定款で定めたとしても、その全部を株主から
奪うことはできません。
◎単独株主権と少数株主権
株主の権利を、権利行使の要件という観点で分類すると、
単独株主権と少数株主権とに分類することができます。
◇単独株主権と少数株主権
◇単独株主権
一株のみを保有する株主でも行使できる権利
◇少数株主権
総株主の議決権の一定割合または一定数の議決権を有する株主のみが
行使できる権利
◆株主平等の原則
株主は、その持ち株の数に応じて、平等な扱いを会社から受けます。
これを株主平等の原則と言います。
株主平等の原則とは、株式会社は、株主としての資格に基づく法律関係に
ついては、株主をその有する株式の内容および数に応じて、
平等に取り扱わなければならないという原則になります。
◎株主平等の原則の内容と例外
株主の平等の原則における「平等」とは、各株式の内容が平等であり、
さらにこれを前提に、各株式の取扱いが平等であるということです。
しかし、この平等は絶対的なものではなく、例外が認められます。
たとえば、資金調達を機動的に行うことを目的として、
異なる首里の株式を発行することが認められます。
また、公開会社でない株式会社においては、定款の定めにより、
剰余金の配当など株主の基本的権利について、株主ごとに異なる取扱いを
定めることができるという例外があります。
たとえば、株主に対して全員同額の利益配当をしたり、
一人一議決権としたりすることが可能です。
◎株主平等の原則違反の効果
株主平等の原則に違反した会社の行為は無効です。
しかし、この行為によって不利益を受ける株主が商人すれば、
無効とはなりません。
◆株式の種類と形式
会社法は、各株式の権利内容は同一であることを原則としながら、
その例外も認めています。
すなわち、一定の範囲と条件の下で、①すべての株式の内容として
特別の定めをすること、および②管理の内容の異なる複数の種類の株式を
発行することが認められています。
このような株式の多様化により、会社に資金町たちの多様化と会社の
支配関係の多様化を図ることが可能となります。
◎株式の内容についての特別の定め
株式会社は、その発行する全部の株式の内容として、次の3種類の株式を
発行することができます。
これらは、定款で定めなければなりません。
◇株式の内容についての特別の定め
◇譲渡制限株式
譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること
◇取得請求権付株式
株主が当該株式会社に対して当該株式の取得を請求することが
できること
◇取得条項付株式
当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得する
ことができること
◎異なる種類の株式
株式会社は権利の内容の異なる、複数の種類の株式を発行することが
できます。
これら種類株式を発行するには、定款で定めなればなりません。
◇剰余金の配当および残余財産の分配についての種類株式
◇優先株式
剰余金の配当・残余財産の分配につき、多種類の株式より優先的な
地位が与えられた株式
◇劣後株式
剰余金の配当・残余財産の分配につき、多種類の株式より劣後的な
地位が与えられた株式
◇混合株式
たとえば、剰余金の配当については優先するが、残余財産の分配に
ついては劣後するといった混合的な内容の株式
◇議決権制限株式
株主総会の全部または一部の事項について、議決権を行使することが
できない株式
◇譲渡制限株式
譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する株式
◇取得請求権付株式
株主が当該株式会社に対して当該株式の取得を請求することができる株式
◇取得条項付株式
当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得する
こておができる株式
◇全部取得条項付種類株式
株主総会の特別決議により、その種類の株式の全部を会社が取得すること
ができるという株式
◇拒否権付種類株式
株主総会、取締役会、清算人会において決議すべき事項について、
その決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の
決議を必要とする株式
◇取締役、監査役を選任できる種類株式
当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、
取締役、監査役を選任できる種類株式のこと
(通常の株主総会では選任しない)
<発行できない会社>
①指名委員会等設置会社
②公開会社
◎単元株制度
単元株制度とは、定款で定めた一定数の株式をまとめたものを一単元とし、
一単元の株式について一個の議決権を与えるが、単元株式数に満たない
株式には、議決権を与えないこととする制度のことを言います。
一般に、単元株制度は、次のような目的で利用されます。
◇株価引上げ策
株価の低い企業が、株価を上げるため、株式併合と同様の効果を
実現する
◇株か引下げ策
株価の高い企業が、株価を下げるため株式分割を行いながら、分割前の
一株に対応する株の株式を一単元とすることで、株主の管理費用を
分割前と同等にすることができる。
◇単元株制度の導入
株式会社は、単元株制度の導入を、定款で定めることができます。
したがって、会社成立後に、単元株制度を導入する場合には、
定款変更手続を行います。
この場合は、原則として、株主総会の特別決議を要します。
ただし、単元株式数を減少または廃止する場合は、株主の権利を害する
危険がないため、取締役の決定によって定款変更をすることができます。
◇単元未満株主の権利
単元株式数に満たない株式を有する株主は、議決権を除く株主の権利を
有します。
ただし、株式会社は、次に示す権利を除き、単元未満株主の権利を、
定款の定めによって制限することができます。
◇制限することのできない単元未満株主の権利
◇全部所得条件付種類株式の取得対価の交付を受ける権利
◇株式会社により取得条項付株式の取得と引換えに金銭等の交付を
受ける権利
◇株式無償割当てを受ける権利
◇単元未満株式を買い取ることを請求する権利
◇残余財産の分配を受ける権利
◇上記のほか、法務省令で定める権利
◆株券および株主名簿
株券とは、株式つまり株主の地位を表章する有価証券を言います。
◎株券の発行
会社法は、株券について、不発行を原則としています。
つまり、株式会社は、その株式にかかる株券を発行する旨を定款で定める
ことができ、この定めをしない限り、株券を発行することはできません。
株券を発行するか否かは、すべての種類の株式について統一的に
定めなければなりません。
株式の種類ごとに株券を発行するかどうかを変えることはできません。
株券を発行する会社では、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に
かかる株券を発行しなければなりません。
ただし、非公開会社では、株主から請求がある時までは、株券を発行しない
ことができます。
◇株券の不発行が原則とされている趣旨
◇非公開会社の場合
株式の流通性に乏しく、株券発行の必要性が少ない
◇公開会社の場合
ペーパーレス化を進めることで、株式取引の迅速性、確実性を図る
ことができる
◎株券不所持の申出
株券発行会社の株主は、その会社に対して、株券の所持を希望しない旨を
申し出ることができます。
株券不所持の申出を受けた株券発行会社は、その株式に係る株券を発行
しない旨を株主名簿に記載または記録しなければなりません。
そして、この記載また記録をした株券発行会社は、その株式に係る株券を
発行することができなくなります。
◎株券失効制度
株券失効制度とは、盗難や遺失等により株券を喪失した場合に、
株券が善意取得されることを防ぐため、一定の手続を経て、
喪失株券を無効にする制度です。
◇株券失効制度の手続の流れ
①株券を喪失した者が、株券発行会社に対し、株券喪失登録簿記載事項を
株券喪失登録簿に記載または記録することを請求する。
↓
②登録により、当該株式について名義書換えができなくなる。
↓
③株券喪失登録日の翌日から1年経過した日に登録が抹消されていない
場合は、その株券は無効となる。
↓
④株券が無効となった場合は、株券発行会社は株券喪失登録者に対して、
株券を再発行する
◎株主名簿
株主名簿とは、株主および株券に関する事項を明らかにするため、
会社法の規定により作成することを要する帳簿です。
絶えず変動する多数の株主を会社との関係で明確化し、固定化することで、
会社の事務処理の便宜を図るためです。
同時に、会社の事務処理が効率化することで経費も削減できるので株主の
利益にもなります。
◇記載時効
株式会社は株主名簿を作成し、次に示す事項を記載または記録しなければ
なりません。
株式を取得した者は、株式会社に対してその株式に係る株主名簿記載
事項を、株主名簿に記載または記録することを請求することができます。
◇株主名簿の記載事項
①株主の氏名または名称、住所
②株主の有する株式の数
③株主が株式を取得した日
④株券発行会社である場合は、株券の番号
◇株主名簿の閲覧、謄写
株主および債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、株主名簿の
閲覧または謄写を請求することができます。
その際には、請求の理由を明らかにする必要があります。
会社は、一定の場合を除き、閲覧または謄写請求を拒むことができません。
◆株式の譲渡
◎株式譲渡自由の原則
株主は自己が所有する株式を自由に譲渡することができます。
これを株式譲渡自由の原則と言います。
◎株式譲渡の方法
◇株式譲渡の方法
株式発行会社では、譲渡の当事者間で意思表示に加え、
株券を交付しなければ、この効力は生じないのが原則です。
これに対し、株券不発行会社では、譲渡の当事者間の意思表示のみで、
譲渡の効力が生じます。
◇対抗要件
株式の譲渡を当事者以外の第三者に主張するには、対抗要件を備える
ことが必要です。
対抗要件は、株券発行会社と不発行会社とでは異なります。
株券発行会社では、前記のとおり、株券の交付が譲渡の効力要件であり、
会社以外の第三者に対する対抗要件でもあります。
他方、会社に対する対抗要件は、株主名簿への記載または記録が会社
および第三者に対する対抗要件となります。
◎株式譲渡自由の制限
株式の譲渡が例外的に制限される場合として、大きく分けて、
法律による制限、定款による制限および契約による制限の三つがあります。
法律による制限には、①時期による制限、②自己株式の取得制限、
③子会社による親会社株式の取得制限があります。
定款による制限には、譲渡制限株式があります。
◇時期による制限
◇権利株の譲渡
権利株の譲渡は、会社に対抗することができません。
ただし、当事者間では譲渡は有効とされています。
◇株券発行前の株式譲渡制限
株券発行会社の場合には、株券の発行前に譲渡は、
会社に対して効力を生じません。
◇子会社による親会社株式の取得制限
子会社は、その親会社である株式会社の株式を原則として取得することは
できません。
ただし、次の表に示す場合には、親会社株式の取得が認められます。
◇例外的に親会社株式の取得が認められる場合
①他の会社の事業の全部を譲り受ける場合において、当該他の会社の
有する親会社株式を譲り受ける場合
②合併後消滅する会社から親会社株式を承継する場合
③吸収分割により他の会社から親会社株式を承継する場合
④新設分割により他の会社から親会社株式を承継する場合
⑤その他、法務省令で定める場合
このように、親会社を適法に取得した場合であっても、子会社は、
相当な時期にその有する親会社株式を処分しなければなりません。
また、子会社は、その有する親会社株式の議決権を行使することが
できません。
◎譲渡制限株式-定款による譲渡制限
◇譲渡の制限
株式会社は、定款によって、その発行する全部または一部の株式の
内容として、譲渡による株式の取得について、株式会社の承認を要すると
定めることができます。
株式会社のなかでも、比較的小規模の会社では、株主を人的な信頼関係に
ある者に限定したいとの要求が強く、譲渡制限株式はこれに応じる
制度です。
◇株式譲渡の承認請求
譲渡制限株式の株主は、その株式を他人に譲り渡そうとするときは、
株式会社に対して、その譲渡を承認するか否かを決定するよう
請求することができます。
また、譲渡制限株式を取得した者も、会社に対して、株式を取得した
ことについて承認をするか否かを決定するよう請求することができます。
◇買取請求
会社が承認をしない場合に、株主または株式取得者は、会社がその株式を
書い取るか、指定買取人を指定することを請求することができます。
◇株式譲渡に対する承認機関
株式譲渡の承認機関は、原則として株主総会ですが、取締役会設置会社に
おいては取締役会となります。
しかし、承認をどの機関が行うかについては、会社ごとに多様な考え方が
ありうるため、定款でこれとは別の定めをすることができると
されています。
◇承認を得ない譲渡の効力
譲渡の当事者間では有効とされますが、会社に対して名義買換えの請求を
することができません。
◇公開会社と非公開会社
発行する株式の全部が譲渡制限株式である会社を非公開会社といい、
それ以外の会社を公開会社と言います。
◇公開会社
発行する株式の一部について譲渡制限を設けている会社。
発行する株式の全部について譲渡制限を設けていない会社。
◇非公開会社
発行する株式の全部について譲渡制限を設けている会社
◎自己株式の取得および保有
◇自己株式の取得とは
自己株式の取得とは、会社が自社で発行した株式を有償で取得することを
いいます。
自己株式の取得は、実質的に出資の払い戻しにあたるため、会社債権者を
害するおそれがあります。
会社法は、自己株式の取得を限定的に認め、取得の方法に応じて
財源規制をすることで、株主等を保護しています。
しかし、自己株式を無償で取得した場合や、他の会社から現物配当で
自己株式の交付を受けた場合には、上記の弊害がないため、
規制を受けずに会社は自己株式を取得できます。
◇自己株式の取得ができる場合
◇自己株式の取得ができる場合の例
◇取得条項付株式において条件が成就した場合
◇譲渡制限株式の譲渡等承認請求に対して承認しなかった場合
◇株主との合意により有償で取得する場合
◇取得請求権付株式において取得の請求があった場合
◇全部取得条項付種類株式を取得する場合
◇譲渡制限株式の相続人等に対して売渡請求をした場合
◇単元未満株式の買取請求があった場合
◇所在不明株主の株式を取得する場合
なお、会社は、取得した自己株式を、特に制限なく保有し続けることが
できます。
◇自己株式取得の財源規制
自己株式の取得により株主に対して交付する金銭などの帳簿価額の総額は、
取得の効力発生日における分配可能額を超えてはいけません。
財源がないのに有償で取得すると、会社財産を減らすことになり、
会社債権者を害することになるためです。
◇自己株式の権利
会社が取得した自己株式について、次に示すとおり、基本的に会社は
権利行使ができません。
◇共益権
議決権は認められない
◇自益権
剰余金配当請求権は認められない
残余財産分配請求権は認められない
◇自己株式の処分
会社が自己株式を第三者に処分する場合は、原則として、募集株式の
会社法が、成立する以前は、株式会社の設立には、原則として、
1,000万円以上の出資が必要とされていました。
会社法では、この設立時の出資額制限が撤廃されたため、
1円の出資で株式会社を設立することができるようになりました。
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(記事作成日、平成29年3月26日)