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表現の自由とは、思想や意見など、内心の精神的作用を外部に発表する
精神的活動の自由のことをいい、憲法21条で保障されています。
◆憲法第21条
「1、集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2、検閲は、これをしてはならない。
通信の秘密は、これを侵してはならない。」
憲法では、19条において、内心的な思想、良心の自由が定められていますが、
この思想や良心は、外部に表現され、他人に伝達されてこそ、
社会的な効果を発揮します。
したがって、思想、良心の自由だけでなく、この表現の自由をも、
保証する必要があります。
この表現の自由は、自己実現、自己統治の観点から重要な役割を果たすため、
精神的自由権の中でも、優越的地位を有することとされています。
自己実現とは、個人が表現活動を通じて自己の人格を発展させることをいい、
自己統治とは、表現活動によって国民が政治的意思決定に関与し、
民主主義を実現することを言います。
表現の自由が保障されていない社会では、自分が発した言葉にびくびくしながら
生きていかねばならず、ひいては、国家権力のいいなりという状態に
甘んじなければならなくなります。
他の重要な人権がきちんと保障され、人間らしい生活を営むためには、
表現の自由が保障されていなければならないのです。
こうしたことから、人権のなかでも、「表現の自由は優越的地位を有する」
といわれます。
◆知る権利
今日では、表現の自由は、自ら思想などを公表して誰かに伝達する
という情報の送り手としての権利のほか、知りたい情報を知ることが
できるという情報の受けてとしての権利も含まれると考えられています。
これを「知る権利」と言い、特に、マスメディアの発達した現代社会では、
非常に重要な権利とされています。
知る権利とは、公権力から妨げられることなく、国民が知りたい情報を
知ることができ、国家等に対して知りたい情報を請求する権利を言います。
知る権利は、表現の自由に含まれるものとして、21条により保障されると
一般に考えられています。
現代は情報の「送り手」と「受け手」とが分離して固定化しており、
送り手の自由を保障するだけでは表現の自由の趣旨である「自己実現・
自己統治」の価値を実現することはできません。
そこで、情報の受け手の側から21条を再構築する必要があり、
その方策が知る権利の保障になります。
◆反論権
たとえば、実際は無実であるのに犯人であるかのような報道をされるなど、
マスメディアの報道でいったん名誉棄損などの人権侵害がなされると、
その回復は非常に困難となります。
その手段として、反論文の掲載などを求められることが考えられます。
しかし、このような「反論権」が認められると、マスメディアに対して
反論の発表を強制することにより、マスメディア自身の表現の自由が侵害され、
かえって表現の自由を損なう結果になりかねません。
したがって、判例は、21条のみを根拠として、反論文の掲載の請求は
認められないと判断しています。
◆表現の自由の内容
◎集会の自由
集会の自由は、集会を開き、主催し、指導し、または集会に参加する等の
行為に対して、公権力が制限を加えることを禁止し、また、それらの行為を
公権力によって強制されないということを意味します。
集会の自由には、集団行動の自由が含まれると考えられています。
たとえば、デモ行進は、「動く集会」として、あるいは、
「その他一切の表現」として、21条で保障されます。
集団行動(デモ行進)の自由が保障されるとすると、これを制限する、
いわゆる公安条例の合憲性が問題になります。
公安条例は、集団行動を事前に抑制するものですから、明確かつ厳格な
要件の下で規制することしか許容されません。
◎公共施設利用の許可制の合憲性
たとえば、市民会館などの公共施設の利用について、条例などで
許可制をとっているケースが見受けられます。
集会を公共施設で行おうとする場合は、使用許可が得られないと
集会を開くことができません。
これは表現の自由に対する制約となり、その合憲性が問題となります。
◆結社の自由
結社の自由とは、団体の結成およびその活動に関する自由になります。
その具体的な内容は、次に掲げるとおりになります。
◎団体を結成し、それに加入する自由
◎団体が団体として活動する自由
◎団体を結成しない自由、団体に加入しない自由、または加入した団体から
脱退する自由
◎団体の内部統制権
団体は、多数決で決まったことに従わせる権限、つまり内部統制権を
有しますが、その統制権にも限界があります。
たとえば、労働組合が特定の候補者を支持する政治活動を行うことは
認められますが、それに反して立候補した組合員の除名は許されないと
されています。
◆通信の秘密
通信の秘密は、公権力による通信内容の探索を打ち切ることが政治的表現の
自由の確保につながるという趣旨によります。
通信の秘密の保障の対象は、通信内容にとどまらず、差出人、受取人の氏名、
住所および日時など、通信に関するすべての事項に及ぶと考えられます。
◆報道の自由と取材の自由
◎報道の自由
報道の自由とは、報道機関が国民に事実を伝達する自由のことになります。
報道は事実を知らせるものであり、特定の思想を表現するものでは
ありません。
しかし、報道の前提として報道内容の編集という知的な作業が行われること、
そもそも真実の伝達と思想や意思の伝達とは厳密には区別できないもので
あることから、報道の自由は、表現の自由の一内容として保障されると
考えられています。
◎取材の自由
取材の自由とは、生の事実に接近して、報道内容を新たにつくり出す自由を
言います。
取材の自由は、報道の自由と異なり、自ら情報を獲得しようとする
積極的行動にかかわることから、憲法上保障されるかが問題となります。
◎捜査機関による証拠の押収と取材の自由
裁判所ではなく、捜査機関が、報道機関の取材活動によって得られてものを
証拠として押収することは、取材の自由の侵害となるのでしょうか。
判例は、公正な刑事裁判を実現するためには適正迅速な捜査が不可欠の
前提であり、報道の自由ないし取材の自由に対する制約の許否に関しては、
裁判所の提出命令と捜査機関による押収との間に本質的な差異はないとして、
検察官ないし警察官による報道機関の取材ビデオテープの押収を認めて
います。
◎国家機密との関係
報道機関による政府情報の取材については、国家機関との関係で、
取材の自由の限界が問題となります。
◆名誉毀損的な表現
人の名誉を傷つける表現は、無制約に認められるわけはなく、
名誉棄損行為は、刑法の名誉棄損罪として刑事罰の対象となります。
しかし、たとえば、国会議員や犯罪行為に関する事実については、
名誉毀損的な表現であっても、社会的価値が認められる場合があります。
そこで、刑法230条の2により、表現の自由と名誉権の調整が
なされます。
◎刑法230条の2
「1、前条(刑法230条)第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、
かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、
真実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、
これを罰しない。
2、前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の
犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3、前条(刑法230条)第1項の行為が公務員又は公選による公務員の
候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、
真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」
◆プライバシーと表現の自由との調整
プライバシーを侵害する行為は不法行為となるでしょうか。
プライバシーと表現の自由との調整が問題となります。
◆選挙運動の自由
選挙運動の自由は、21条の表現の自由として保障されます。
選挙権を行使して公権力の行使者を選定するという、選挙本来の意義を
十分発揮させるためには、有権者が必要かつ十分な判断材料を
もたなければなりません。
そのため、言論や出版などを通じての選挙運動の自由は不可欠と
なります。
他方で、選挙運動を放任すると、買収等の腐敗が生まれ、
選挙の公正が害されるなどの弊害が生じます。
そこで、公職選挙法が選挙運動の方法について規制します。
◆表現の自由の限界
◎表現の自由を規制する立法の合憲性判断基準
表現の自由を中心とする精神的自由権を規制する法律については、
経済的自由権を規制する法律よりも、特に厳しい基準で、憲法違反か
どうかを審査しなければなりません。
つまり、精神的自由権と経済的自由権とで、合憲性の審査基準を分ける
という考え方になります。
このような考え方を、二重の基準論と言います。
二重の基準論においては、精神的自由権を制約する法律についての
憲法判断は、裁判所が積極的に介入して厳格に行うべきです。
これに対して経済的自由権を制約する法律についての憲法判断については、
国会の判断を尊重するべきです。
合憲性審査基準は、次に掲げるとおりに分類されます。
◇文面審査
◇事前抑制の理論
◇明確性の理論
◇適用審査
◇明白かつ現在の危険の基準
◇LRAの基準
◇文面審査
◇事前抑制の理論
事前抑制の理論とは、表現に対する公権力による事前の抑制を排除する
との理論を言います。
例外として許されるのは、裁判所による差止めと、デモ行進の届出制に
なります。
事前抑制の具体例として代表的なものに、検閲があります。
検閲は絶対的に禁止されます。
憲法21条2項では、検閲が禁止され、通信の秘密が
保障されています。
表現者の表現を委縮させてしまい、ひいては表現の自由に対する
脅威を防止することを目的としています。
国や警察などが、こうした表現行為の内容を事前に審査し、
規制することは、原則として許されません。
憲法21条は、この事前抑制を禁止しています。
特に行政権が主体となって、表現行為の内容を事前に審査して
発表を禁じる検閲については、同上2項によって、
絶対的に禁止されています。
◇明確性の理論
明確性の理論とは、精神的自由を規制する立法はその要件が明確で
なければならないとする理論です。
◇適用審査
◇明白かつ現在の危険の基準
明白かつ現在の危険の基準とは、①近い将来、実質的害悪を
引き起こす蓋然性が明白であり、②実質的害悪が重大であり、
③当該規制手段が害悪を避けるのに必要不可欠であることの
3要件が認められる場合に、表現行為を規制できるとするものです。
◇LRAの基準
LRAの基準は、規制手段が広範囲である点が問題とされる法令に
対して、立法目的を達成するため規制の程度のより少ない手段が
存在するかを具体的、実質的に審査し、それが存在する場合は、
当該立法を違憲とする基準のことです。
◎関連記事
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・精神的自由権とは・・
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(記事作成日、平成29年3月31日)