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株式会社:組織再編とは・・


◆事業の譲渡

 事業の譲渡では、譲渡契約で定めた会社財産等が個別に、譲渡会社から譲受会社
 へ移転する。

 ◎事業の譲渡とは

  事業の譲渡は、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能
  する財産の全部または一部を譲渡することで、会社間の契約によって行われ
  ます。
  これによって、譲渡会社がその財産によって今まで営んできた事業活動の
  全部または一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じて、
  法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴います。
  事業の譲渡では、契約で定めた財産等が個別に移転するため、必ずしも譲渡
  する資産、債務、雇用契約等の権利義務に関する事項を包括的に定める必要
  はありません。

 ◎事業の譲渡の手続

  事業の譲渡は、まず事業譲渡契約の内容を決定し、事業譲渡契約を締結しま
  す。この事業譲渡契約の内容は、取締役会設置会社にあっては、取締役会
  決議で決定すべき事項です。取締役または執行役に内容の決定を委任する
  ことはできません。

  ◇事業の譲渡の手続の流れ

   ◇事業譲渡契約の内容決定
    取締役会設置会社では取締役会決議で決定

   ◇譲渡会社・譲受会社との間で事業譲渡契約の締結
    法律上は、事業譲渡契約自体は特に方式を必要としないが、実務では
    契約書を作成することが望ましい

   ◇株主総会の特別決議
    ①事業の全部を譲渡する場合
     →譲渡会社および譲受会社の双方の特別決議による承認が必要
    ②事業の重要な一部を譲渡する場合
     →譲渡会社における特別決議による承認が必要

   ◇その他の手続
    ①事業の譲渡の結果、会社の事業目的に変更が生ずるとき
     →定款の変更が必要
    ②許認可事業を営む会社の事業譲渡
     →主務大臣への認可・届出が必要

 ◎事業の譲渡の効果

  事業の譲渡の結果、有機的一体として機能する財産が譲渡会社から譲受会社
  に移転します。しかし、譲渡会社が第三者に負っていた債務は当然には譲受
  会社には移転しません。ただし、譲受会社が譲渡会社の商号を譲り受け、
  引き続き使用する場合や債務を引き受ける旨の広告をした場合は、譲渡会社
  だけでなく、譲受会社も譲渡会社の事業により生じた債務を弁済する責任を
  負います。
  また、従業員と譲渡会社との雇用関係は譲渡財産に含まれますが、両者間に
  ある労働契約は、従業員の承諾がなければ譲受会社に譲渡することができま
  せん。

◆合併

 合併は、二つ以上の会社が契約により一つの会社となることで、①吸収合併と
 ②新設合併がある。

 ◎合併とは

  合併とは、二つ以上の会社が契約により法定の手続に従って、一つの会社と
  なることをいいます。
  合併の種類には、①吸収合併と、②新設合併とがあります。吸収合併とは、
  会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の
  全部を合併後存続する会社に承継させるもののことをいいます。新設合併と
  は、二以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務
  の全部を合併により設立する会社に承継させるもののことをいいます。
  以下では、株式会社どうしの合併を中心に説明します。

 ◎合併の手続

  合併の具体的な手続の流れは、次のとおりです。

  ◇合併の手続の流れ

   ◇合併契約の締結
    存続会社および消滅会社の商号および住所、新設会社の目的、商号、本店
    所在地等、消滅会社の株主または社員に対して交付される対価に関する
    事項、吸収合併の効力発生日等、法定事項を定めた合併契約を締結する。

   ◇事前開示
    合併契約の内容その他法務省令所定の事項を記載した書面または記録した
    電磁的記録を本店に備え置き、株主および債権者の閲覧に供する

   ◇株主の保護
    株主総会の承認決議等は、原則として特別決議による承認が必要。合併に
    反対の株主に株式買取請求権の保障。

   ◇債権者保護
    合併当事会社に対し債権を有する者に、合併についての意義申立ての機会
    を与える
    →意義を申し出た債権者には、原則として弁済または相当の担保を提供し
     なければならない

   ◇合併の効力発生
    ①吸収合併存続会社
     効力発生日に吸収合併消滅会社の権利義務を承継
    ②新設合併設立会社
     成立日に新設合併消滅会社の権利義務を承継

   ◇事後の開示
    吸収合併存続会社または新設合併設立会社の吸収合併または新設合併に
    関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面または記録した
    電磁的記録を作成

   ◇登記
    吸収合併または新設合併の登記

◆会社分割

 会社分割は、一つの会社を二つ以上の会社に分けることで、①吸収分割と
 ②新設分割とがある。

 ◎会社分割とは

  会社分割とは、一つの会社を二つ以上の会社に分けることをいいます。会社
  分割の種類には、①吸収分割と②新設分割とがあります。吸収分割とは、
  株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または
  一部を分割後他の会社に承継させることをいいます。新設分割とは、一または
  二以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部
  または一部を分割により設立する会社に承継させることをいいます。

 ◎会社分割の手続

  ◇分割当事会社

   分割会社となることができるのは、株式会社または合同会社のみです。
   他方、承継会社には、すべての会社がなることができます。

  ◇分割手続

   会社分割は、合併と同様の手続で行われます。

   ◇会社分割の手続の流れ

    ◇分割契約
     ①吸収分割の場合→分割契約の締結
     ②新設分割の場合→分割計画の作成

    ◇事前開示
     分割契約または分割計画の事前開示(株式会社のみ)

    ◇社員の保護
     ①株式会社
      原則として株主総会の特別決議による分割契約または分割計画の
      承認
     ②合同会社
      総社員の同意
     会社分割に反対の株主に株式買取請求権の保障

    ◇債権者保護
     分割当事会社に対し債権を有する者に異議申立ての機会を保障

    ◇分割の登記
     吸収分割または新設分割の登記

 ◎会社分割の効果

  合併の場合と異なり、分割会社は分割後も存続し、分割によって解散しませ
  ん。

  ◇吸収分割

   承継会社が分割会社の権利義務を承継します。分割により、分割会社は、
   対価として与えられるものの種類に応じて、承継会社の株主または社員、
   社債権者、新株予約権者などになります。

  ◇新設分割

   新設分割設立会社は、その設立の日に分割会社の権利義務を会社が成立し、
   分割会社は、対価として与えられるものの種類に応じて、新設分割設立会社
   の株主などになります。

◆株式交換および株式移転

 株式交換および株式移転は、会社間に完全親子会社関係を円滑に創設する手続
 である。

 ◎株式交換および株式移転とは

  株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社または合同
  会社に取得させることをいいます。その趣旨は、煩雑な手続を経ずに、既存
  の会社間に完全親子会社関係を円滑に創設することにあります。
  株式移転とは、一または二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに
  設立する株式会社に取得させることをいいます。その趣旨は、株式交換と
  同様、煩雑な手続を経ずに、新会社を設立し、完全親子会社関係を円滑に
  創設することにあります。

 ◎株式交換および株式移転の手続

  株式交換も株式移転も、ともに社員(株主)および会社債権者への影響が
  大きいため、会社法に一定の手続が定められています。

  ◇株式交換の手続の流れ

   ◇株式交換契約の締結
    完全親会社となる会社と完全子会社となる会社との間で、株式交換契約
    を締結する

   ◇事前開示
    株式交換の内容その他法務省令所定の事項を記載した書面を本店に備え
    置き、株主および債権者の閲覧に供する(株式会社のみ)

   ◇社員の保護
    ①株式会社
     原則として株主総会の特別決議による株式交換契約の承認
    ②合同会社
     総社員の同意
    株式交換に反対の株主に株主買取請求権の保障

   ◇債権者保護
    会社財産に変動が生ずる場合や、会社法所定の事由がある場合のみ

   ◇効力発生
    株式交換完全親会社は、効力発生日に株式交換完全子会社の発行済株式
    の全部を取得する

   ◇事後の開示
    株式交換完全親会社・子会社は所定の事項を記載した書面を本店に備え
    置く

  ◇株式移転の手続の流れ

   ◇株式移転計画の作成
    株式移転により設立する株式移転設立完全親会社の目的、商号、本店
    所在地および発行可能株式総数などの法定事項を定める

   ◇事前開示
    株式移転の内容その他法務省令所定の事項を記載した書面を本店に備え
    置き、株主および債権者の閲覧に供する

   ◇株主の保護
    原則として株主総会の特別決議による株式移転計画の承認。株式移転に
    反対の株主に株式買取請求権の保障。

   ◇債権者保護
    会社財産に変動が生ずる場合や、会社法所定の事由がある場合のみ。

   ◇効力発生
    株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行
    済株式の全部を取得する

   ◇事後の開示
    株式移転設立完全親会社および株式移転完全子会社は所定の事項を記載
    した書面を本店に備え置く

   ◇登記
    株式移転により設立する株式会社について所定の日から2週間以内に、
    本店所在地にて設立の登記をする

 ◎株式交換および株式移転の効果

  ◇株式交換の効果

   完全親会社は、効力発生日に、完全子会社の発行済株式の全部を取得しま
   す。
   完全子会社となる会社の株主は、対価として与えらえるものの種類に応じ
   て、完全親会社となる会社の株主、社員、社債権者、新株予約権者等に
   なります。

  ◇株式移転の効果

   株式移転により設立される会社は、その成立の日に、その完全子会社の
   発行済株式の全部を取得します。
   完全子会社となる会社の株主は、対価として与えらえれるものの種類に
   応じて、株式移転により設立される会社の株主、社債権者、新株予約権者
   等になります。

◆組織変更

 組織変更を行うには、社員および会社債権者を保護するため、所定の手続を
 とらなければならない。

 ◎組織変更とは

  組織変更とは、株式会社がその組織を変更することにより、持分会社となる
  こと、または持分会社がその組織を変更することにより、株式会社となること
  をいいます。

 ◎組織変更の手続

  株主、社員および会社債権者に影響が大きいため、株主保護と会社債権者保護
  の手続がとられます。

  ◇組織変更の手続の流れ

   ◇組織変更計画の作成
    一定の法定事項を定めた組織変更計画を作成する

   ◇事前開示
    組織変更計画の内容その他法務省令所定の事項を事前に開示し、株主
    および会社債権者の閲覧に供する(株式会社が組織変更をする場合のみ)

   ◇社員の保護
    組織変更で定めた効力発生日の前日までに、組織変更計画について、
    総株主または総社員の同意を得る

   ◇債権者保護
    組織変更をする会社に対し債権を有する者に異議申立ての機会を保障

   ◇効力発生
    組織変更計画で定めた効力発生日に変更の効力が発生する

   ◇登記
    組織変更の効力が生じた日から2週間以内に、本店所在地にて、組織変更
    前の会社については解散の登記をし、組織変更後の会社については設立の
    登記をする











 












 











 


 



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(記事作成日、平成29年5月30日)



 

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