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会社法:持分会社とは・・


持分会社には、①合名会社、②合資会社、③合同会社がある。

◆持分会社とは

 持分会社とは、合名会社、合資会社または合同会社の総称をいいます。
 持分会社には、次に示すような特徴があります。

 ◎持分会社の特徴

  ①社員の個性が重要であること
  ②社員間および社員と会社間の内部規律について原則として定款自治が認め
   られ、その設計が自由であること
  ③機関について、株式会社のような所有と経営を分離する取締役のような機関
   の設置が強制されないこと
  ④社員の議決権は原則として一人一議決権であること
  ⑤持分の譲渡には原則、社員全員の承諾が必要であること

 ◎持分会社と社員の責任

  持分会社の社員間には人的信頼関係があり、会社とのかかわりでも経営に
  対して意欲があり個性が重視されます。したがって、社員は原則として会社
  の業務を執行し、会社を代表します。
  合名会社と合資会社の無限責任社員は、会社債権者に対して直接、連帯して
  無限責任を負います。一方、合資会社の有限責任社員は、会社債権者に対して
  直接責任を負いますが、履行していない出資の価額が限度とされます。
  合同会社の社員は有限責任社員ですが、出資について全額払込主義がとられて
  いるため、その責任は、株式会社の株主と同様、間接有限責任です。

  ◇各会社の社員の責任

   ◇合名会社
    直接無限責任

   ◇合資会社
    直接無限責任
    直接有限責任

   ◇合同会社
    間接有限責任

   ◇株式会社
    間接有限責任

◆持分会社の設立手続

 持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

 ◎定款の作成

  持分会社を設立するには、まず、その社員となろうとする者が定款を作成し、
  その全員がこれに署名し、または記名押印しなければなりません。
  持分会社の定款の記載事項は、次に示すとおりです。

  ◇持分会社の定款記載事項
   ①会社の目的
   ②会社の商号
   ③本店の所在地
   ④社員の氏名または名称および住所
   ⑤社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれであるかの別
   ⑥社員の出資の目的およびその価額または評価の標準

 ◎出資の履行

  出資の履行については、合名会社および合資会社と合同会社とで分けて規制
  されます。合同会社の社員は全員が間接有限責任のみを負うので、規制の区分
  があるのです。

  ◇合名会社および合資会社の場合

   社員はすべて出資義務を負い、社員の出資の目的およびその価額または評価
   の標準は定款で定めなければなりません。

  ◇合同会社の場合

   合同会社はすべて間接有限責任社員のみで構成させるため、出資の目的物
   は、金銭その他の財産に限定されます。
   出資の履行については、合同会社の社員になろうとする者に全額払込み・
   金銭以外の財産について全部給付の責任を負わせることとし(全額払込
   主義)、定款の作成後、設立の登記をする時までに行わなければなりませ
   ん。会社債権者の引当てとなる会社財産の確保を図る趣旨です。

 ◎設立登記

  持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立
  します。

 ◎設立の瑕疵

  ◇設立の無効

   持分会社の設立が無効となる原因として、株式会社と同様に客観的無効原因
   があるほか、主観的無効原因も存在します。たとえば、設立に参加した社員
   個々の設立行為に、錯誤や通謀虚偽表示がある場合に、主観的無効原因が
   認められます。

  ◇設立の取消し

   持分会社では、個々の社員の設立行為の取消原因が常に会社の設立自体の
   取消原因となるとされています(設立取消しの訴え)。取消原因として、
   社員の制限行為能力、意思表示の瑕疵を理由とする設立に係る意思表示の
   取消しなどがあります。

◆持分会社の運営

 持分会社では、社員が業務を執行するが、定款で業務執行社員を定めることが
 できる。

 ◎業務の執行

  ◇社員の業務執行

   社員は定款に別段の定めがある場合を除いて、持分会社の業務を執行しま
   す。有限責任社員であるか、無限責任社員であるかを問いません。
   社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある
   場合を除き、社員の過半数をもって決定します。ただし、持分会社の常務に
   ついては、各社員が単独で行うことができます。

  ◇業務執行社員

   持分会社では、定款の定めにより、一部の社員のみが業務執行を行うとする
   ことができます。
   この場合において、業務執行社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は
   定款に別段の定めがある場合を除き、業務執行社員の過半数で決定します。

  ◇監視権

   業務執行社員を定款で定めた場合に、各社員は、持分会社の業務を執行する
   権利を有しないときであっても、その業務および財産の状況を調査すること
   ができます。これを監視権といいます。

 ◎業務執行社員の責任

  ◇業務執行社員の義務

   業務執行社員は、善管注意義務および忠実義務をもって、その職務を行わな
   ければなりません。
   また、株式会社の取締役と同様に、競業避止義務を負い、利益相反取引を
   制限されます。

  ◇業務執行社員の責任

   業務執行社員は、その任務を怠ったときは、持分会社に対して連帯して、
   これによって生じた損害を賠償する責任を負います。

 ◎会社の代表

  業務を執行する社員は、原則として持分会社を代表します。そして、持分会社
  を代表する社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為
  をする権限を有しており、この権限に制限を加えても、善意の第三者に対抗
  することはできません。
  業務を執行する社員が二名以上ある場合、業務執行社員は、原則として各自、
  持分会社を代表します。

 ◎社員の加入と退社

  ◇加入

   持分会社は、新たに社員を加入させることができます。社員の加入は、
   総社員の同意により当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を
   生じます。

  ◇退社

   退社とは、持分会社において、会社の存続中に特定の社員の社員としての
   資格が絶対的に消滅することをいいます。つまり、退社の性質は持分の
   払戻しです。
   退社には、任意退社と法定退社とがあります。

   ①任意退社

    持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合、またはある社員の終身の
    間会社が存続することを定款で定めた場合は、各社員は、6ヶ月前までに
    予告をして、事業年度の終了時に退社をすることができます。

   ②法定退社

    おもな法定退社事由は次のとおりです。

    ◇おもな法定退社事由

     ◇定款で定めた事由の発生
     ◇総社員の同意
     ◇死亡
     ◇合併による消滅
     ◇破産手続開始の決定
     ◇解散
     ◇後見開始の審判を受けたこと
     ◇除名

  ◇持分の払戻し

   退社した社員は、その出資の種類を問わず、持分の払戻しを受けることが
   できます。また、退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で
   払い戻すことができます。事業の継続が困難となることを防止するため、
   金銭での払戻しができるようにしたのです。

 ◎持分の譲渡

  社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人
  に譲渡することができません。

 ◎利益配当

  社員は、持分会社に対して、利益の配当を請求することができます。持分会社
  は、利益配当の請求方法その他利益の配当に関する事項を定款で定めることが
  できます。




















 












 











 


 



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(記事作成日、平成29年5月30日)



 

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