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行政上の強制執行とは、行政上の義務が国民によって履行されない場合に、その義務が履行された状態を行政庁が自力で作り出すことを言います。
これは、行政行為の自力執行力の表れと言えます。
また、この国民の義務は、法律上の義務でなければならず、行政上の強制執行そのものについても、法律上の根拠が必要となります。
行政上の強制執行には、次の4種類がありますが、執行罰や直接強制については、ほとんど規定はなく、行政上の作為義務や不作為義務に対する行政上の強制執行としては、代執行が一般的です。
代執行の要件や手続きについては、行政代執行法に規定されています。
このように、強力な手段が行政側に認められている以上、行政上の強制執行ができる場合には、民事上の強制執行を行うことはできません。
◆行政上の
◆代執行
代執行とは、行政上の代替的作為義務、つまり他人が代わってすることができ、かつ、一定の行為が必要な義務を義務者が履行しない場合に、行政庁が自ら義務者のなすべきことを行い、または第三者に行わせて、その費用を義務者から徴収する作用を言います。
たとえば、違法建築物の所有者に代わってその建築物を取り除くことです。
代執行の対象とされる義務は、法律により直接命じられ、または法律に基づいて行政庁により命じられたものでなくてはなりません。
代執行に関する一般法としては、行政代執行法があり、個別に規定する法律としては、土地収用法などがあります。
◎代執行の要件
行政代執行法に基づく代執行は、次の表に示す要件を満たすことにより行うことができます。
◇法律または行政行為(命令)による作為義務が存在すること
◇義務が代替的作為義務であること
◇義務の履行がないこと
◇その不履行を放置することが著しく公益に反すること
◇他の手段によってはその義務の履行が困難であること
◎代執行の手続
代執行は、次の手順でなされます。
◇原則的な場合
①行政庁は、相手方が義務を履行しない場合は、相当の履行期限を定め、その期日までに履行がなされないときは代執行を成すべき旨を、あらかじめ文書で戒告しなければならない。
↓
②行政庁は、義務者が戒告において指定された期限までに義務を履行しないときは、代執行令書により、代執行の時期、責任者の氏名および代執行に要する費用の見積額を通知する。
↓
③代執行の実施後は、義務者に文書によって費用の納付を命ずる。義務者が納付しない場合は、国税滞納処分の手続によって強制徴収する。
◇非常の場合等
上記、原則的な場合の①②の手続を経ないで代執行できる。
◎執行責任者の証明
代執行の実施の際、執行責任者は、自分が執行責任者であることを示す証票を携帯しなければなりません。
また、証票の呈示を求められた場合には、呈示しなければなりません。
◆執行罰(間接強制)
執行罰とは、非代替的な作為義務や不作為義務が履行されない場合に、
行政庁が一定の期限を示し、期限内に義務の履行がなされないときは過料を
科す旨を予告することにより、義務者に心理的な圧迫を加えて、
間接的に義務の履行を強制する作用を言います。
執行罰は、制裁を目的とするものではなく、義務の履行を確保する手段
ですから、義務の履行がなされるまで何度でも科すことができます。
現在、執行罰についての一般法は存在しません。
砂防法36条に規定が存在するのみです。
◆直接強制
直接強制とは、義務者が義務を履行しない場合に、直接に行政庁が義務者の
身体または財産に行政力を加えて義務の内容を実現する作用を言います。
直接強制は、即効的に義務を実現することができる反面、義務者の身体
または財産に直接的に実力を行使する作用ですから、人権侵害の程度は
きわめて大きくなります。
したがって、現在は直接強制を定めた一般法は存在しません。
成田新法などの個別法にて若干存在するのみです。
◆行政上の強制徴収
行政上の強制徴収とは、国民が税金などを納めない場合に、
強制的に徴収する作用を言います。
行政上の強制徴収は、直接強制の一種です。
金銭債権の強制執行手続に関して、特に簡単な方法を認めたものになります。
国税の強制徴収に関しては、国税徴収法が定められています。
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(記事作成日、平成29年4月3日)