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◆責任財産の保全
債権者は、一定の場合、強制執行に備えて、その対象となる債務者の財産を
確保することができる。
◎責任財産とは
責任財産とは、強制執行の対象となる財産のことをいいます。債権は、債権者
から債務者に対して一定の行為を請求する権利です。たとえば、金銭の消費
貸借契約を締結した場合、履行期日に借主が元本等を弁済してはじめて、
債権者は満足をします。
ところが、債務者が債務を履行しなければ、債権者にとっては、その債権も
経済的な価値がないのと一緒です。
そこで、債務者が任意に債務を弁済しない場合には、債務者の財産に対して
差押えをし、裁判所の助力を得て換価の手続(強制執行)をし、そこから
債権の回収を図ることになります。
◎責任財産の保全
さて、強制執行をする前提として、債務者の責任財産が存在しなければなり
ません。債務者が責任財産がなくなる状態(無資力という)になれば、
行政執行は空振りに終わってしまいます。
そこで、債務者の責任財産を確保するための手段として、債権者代位権と
詐害行為取消権の制度が用意されています。
◆債権者代位権
債権者代位権を行使するためには、原則として、債務者が無資力であることを
要する。
◎債権者代位権とは
債権者代位権とは、債務者が自らの有する債権などの財産権を行使しない
場合に、債権者がその債権を保全するために、債務者に代わってその権利を
行使して債務者の責任財産の維持および充実を図る制度をいいます。
債務者代位権は、債権者が「自己の名」をもって、債務者の権利を代位行使
します。あくまで自己の名で行うのであって、代理人として行使するのでは
ありません。
◎債権者代位権の要件
債権者代位権は、債権者にとって便利な権利ですが、無条件に行使すること
ができるわけではありません。無条件に債権者代位権の行使を認めてしまう
と、債務者の財産管理の事由に対する不当な干渉になっていまうおそれが
あるからです。
そこで、債権者と債務者の利益調整を図る観点から、債権者代位権が成立
するためには、次の三つの要件が必要であるとされています。
①債権者が自己の債権を保全する必要があること(無資力要件)
②債務者が自らその有する権利を行使しないこと
③債権が原則として弁済期に達していること
◇債権者が自己の債権を保全する必要があること(無資力要件)
債権者が保全しようとする債権(被保全債権)は、原則として金銭債権で
あることが必要です。これに加えて、金銭債権の場合には債務者が無資力
えあることが要件になります。
ただし、例外的に、本来の目的から離れて違う目的に使うことが認められ
る場合には(転用という)、金銭債権以外の債権を保全するためでもよく、
無資力であることという要件も不要です。
◇債務者が自らその有する権利を行使しないこと
権利の行使はあくまで債務者が行うべきですから、債務者がすでに自ら
権利を行使している場合には、その権利行使が不適切であったとしても、
債権者は債権者代位権を行使できません。
◇債権が原則として弁済期に達していること
この要件には、次の二つの例外があります。①裁判上の代位(裁判所の
許可を得て行使すること)の場合と、②保存行為としての代位の場合は、
弁済期に達していなくても行使可能です。②の具体例としては、不動産で
未登記の権利について代位して登記する場合や、代位債権が消滅時効に
かかるのを防ぐため時効の中断をしておく場合があります。
◎債務者代位権の効果
債務者代位権の行使によって、次の効果が生じます。
◇債権者代位権の効果
①債務者がその権利につき処分権を失う
債務者は自己が有する債権について、債権譲渡などができなくなる
②時効の中断
債務者の第三債務者に対する債権の時効は中断する。しかし、債権者の
債務者に対する被保全債権は時効中断しない
③代位権行使の効果の帰属
効果は債務者に直接帰属する
代位の対象が物の引渡請求権の場合
→受領拒絶のおそれがあるため、債権者は直接自己へ、引渡しを請求する
ことができる
代位の対象が金銭債権の場合
→代位債権者は債務者に対する受け取った金銭の返還債務と、自己の
債務者に対する債権とを相殺することで、事実上優先弁済を受ける
ことができる
◆詐害行為取消権
詐害行為取消権は、必ず、裁判を起こし、その手続のなかで行使しなければ
ならない。
◎詐害行為取消権とは
詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することをしって法律行為をした
場合に、その法律行為の取消しを債権者が裁判所に請求できるという制度を
いいます。
債権者が債務者に対して有する債権(被保全債権)を保全するために、
債務者と第三者(受益者という)との間で行われた法律行為を債権者が取り
消すことができる制度が定められています。これが、詐害行為取消権です。
◎詐害行為取消権の要件
詐害行為取消権は、債務者がいったん行った契約などの法律行為を取り消す
権利です。ただ、この権利行為を容易に認めると、債務者の財産管理の自由
を制限することになります。
したがって、債権者と債務者の利益の調整を図る趣旨から、民法は、一定の
要件を満たす場合に限り、詐害行為取消権を行使することができるとして
います。以下では、①客観的要件と、②主観的要件の二つに分けて説明します。
◇客観的要件
客観的要件はさらに四つの要件に分かれます。①債務者の無資力、②債務者
が債権者を害する法律行為をしたこと、③被保全債権が金銭債権であること、
④被保全債権が詐害行為の前に成立したことです。
◇詐害行為取消権の客観的要件
①債務者の無資力
債務者に対する不当な干渉とならないようにするため、債務者が
無資力であることが必要とされる。
②債務者が債権者を害する法律行為をしたこと
対象となる行為は、債務者のした法律行為であって、財産権を目的と
するものに限られる。詐害行為取消権はあくまで責任財産の保全を目的
としており、たとえば相続の承認または放棄など身分行為の取消しまで
認めてしまうと、債務者の人格的な事由まで不当に侵害することになる
からである。
債務者を害する法律行為といえるためには、債務者の行為によって
債務者の財産が減少し、その結果、債権者の債権が完全な満足を得られ
なくなることが必要である。
③被保全債権が金銭債権であること
詐害行為取消権はあくまでも責任財産保全の制度であり、被保全債権
は、強制執行され金銭が分配されることで満足する債権でなければ
ならない
④被保全債権が詐害行為の前に成立したこと
詐害行為取消権は特定の金銭債権を保全することを目的としている
ため、詐害行為が発生した後に発生した債権では、その詐害行為に
より債権が害されたとはいえない。
なお、②の要件に関連して、離婚に伴う財産の分与について、判例は、
財産分与が法律の趣旨に反して不相応に過大であり、財産分与に仮託して
なされた財産処分であると認められるような特段の事情のな限り、詐害
行為とならないとしています。
◇主観的要件
「債務者が、詐害行為の当時、詐害の事実を知っていること」および「受益者
(転得者含む)が受益(転得)の当時、債権者を害すべき事実を知っている
こと」が必要です。詐害の事実を知っているとは、当該行為が債権者を
害することを知っていることをいい、必ずしも債権者を害することを意欲
することまでは必要としません。
詐害行為取消権では、取消しの対象となる法律行為に相手方(受益者)が
いるので、受益者のことも考慮しなければなりません。したがって、債務者
の財産管理の自由を保障するとともに、受益者または転得者の取引の安全に
対する配慮も必要になってくるのです。
そのため、債務者および受益者(転得者)が、債権者を害することを知らな
いで行為をした場合には、当該行為を詐害行為として取り消すことはできな
いとされています。逆にいえば、債務者および受益者(転得者)が、債権者
を害することを知りながら、あえて行為をしたときは、債権者としては詐害
行為取消権を行使することができます。
◎詐害行為取消権の行使
詐害行為取消権は、必ず、裁判を起こし、その手続のなかで行使しなければ
なりません。取引の安全に与える影響が大きいので、裁判所に請求して
取消権を行使させるようにしたのです。
詐害行為取消権の行使によって取り消すことができるのは、原則として、
詐害行為当時の被保全債権の債権額までとなります。取消権を行使する
債権者が損害を受ける限度でのみ、取消しを認めるべきだからです。
ただし、例外として、詐害行為の目的物が不可分の場合であれば、債権額を
超えて全部について取り消すことができます。
詐害行為取消権の行使期間については、取引の安全を考えて、特に短い消滅
時効が定められています。
◎詐害行為取消権の効果
◇総債権者の共同担保
詐害行為取消権の効果は、すべての債権者の利益のために生じます。つまり、
詐害行為により債務者の責任財産からいったん外れた財産は、詐害行為取消
権の行使により債務者の責任財産のなかに戻り、総債権者の共同の担保財産
となるのです。
◇事実上の優先弁済
詐害行為取消権は、総債権者のために責任財産を保全する制度ですから、
取消権を行使した債権者が優先弁済権を主張することはできません。
しかし、動産や金銭については、債務者が受領を拒絶するおそれもあり
ます。そこで、債務者は、これらの動産や金銭を受益者に対して直接自己
に引き渡すように請求することが認められます。そのうえで、債権者は
債務者に対する受け取った金銭の返還債務と、自分がもつ債務者への債権
を相殺することで、事実上、優先弁済を受けることができるのです。
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(記事作成日、平成29年6月2日)