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行政事件訴訟は、裁判所が行政に関する争いについて判断する裁判である。
◆行政事件訴訟とは
◎行政事件訴訟の意味
行政事件訴訟とは、行政に関する争いについての裁判をいいます。この行政事件訴訟の手続を定めた法律のことを行政事件訴訟法といいます。
◎行政事件訴訟制度が置かれた趣旨
すでにみた不服申立制度は、費用がかからない等、国民にとってさまざまなメリットがありました。しかし、不服申立制度があればこれで国民の権利利益の保護として万全かというと、必ずしもそうとはいえません。不服申立制度は、行政庁の行った処分などについて、その適否や当否を、いわば身内である他の行政庁や処分などを行った行政庁自身に判断させるものです。公正かつ公平な判断がなされるかについて、問題なしとはいえないでしょう。身内意識が高じて、手心を加えるとまではいかなくても、国民に対して消極的な判断をすることは十分考えられます。その結果、行政活動によって国民に生じた損害について、救済が不十分になるおそれがあります。
そこで、憲法はこのような事態を考慮して、行政機関に対して「適法か違法かの最終判断」をする権限を与えませんでした。行政事件についても、最終的には裁判所が判断することになったのです。行政事件訴訟法は、その手続法として、1962年に制定されました。
行政事件訴訟法は、民事訴訟法の特別法に位置づけられます。したがって、行政事件訴訟について、行政事件訴訟法に規定のない事項に関しては、一般法である民事訴訟法の規定が適用されます。
◆行政事件訴訟の種類
◎行政事件訴訟の種類
行政事件訴訟の種類の中で、最も重要なのは、法定抗告訴訟に分類される「処分の取消しの訴え」や「裁決の取消しの訴え」といった取消訴訟です。
現実になされる行政事件訴訟の大部分は取消訴訟だからです。
◎抗告訴訟
抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいいます。
抗告訴訟は、法定抗告訴訟と法定外抗告訴訟とに分かれます。法定抗告訴訟には、処分と裁決の取消しの訴えのほか、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴えおよび差止めの訴えがあります。
◆無効等確認訴訟・違法確認訴訟
◎無効等確認訴訟
◇無効等確認訴訟とは
無効等確認訴訟(無効等確認の訴え)とは、処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴訟のことです。
本来、行政処分が不存在または無効であれば、公定力、不可争力などは生じないはずですが、実際には無効な行政処分であっても行政庁はあくまでも有効なものとして行政活動を続行することがあります。
そのため、裁判所によって行政行為の無効を確認してもらい、さらなる行政活動の続行を止める必要があります(予防的無効確認訴訟)。
また、現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない場合にも、無効等確認訴訟を認める必要があります(補充的無効確認訴訟)。
◇訴訟要件-原告適格
無効等確認訴訟は、特に無効の確認を求める必要のある者に限って提起することができます。
◇訴訟要件-その他の訴訟要件
無効等確認訴訟の訴訟要件のうち、被告適格、裁判管轄については、取消訴訟の規定が準用されます。また、処分性の要件についても満たす必要があります。
しかし、出訴期間の規定は準用されていませんから、無効等確認訴訟はいつでも提起することができます。また、審査請求前置の規定も準用されていませんから、審査請求を経ずに無効等確認訴訟を提起することができます。
◎不作為の違法確認
◇不作為の違法確認訴訟とは
不作為の違法確認訴訟(不作為の違法確認の訴え)とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分または裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟のことです。行政庁が法令に基づく申請を握りつぶすのを防止して、申請者の権利を保護し、行政による事務処理の促進を図るための制度です。
◇訴訟要件
不作為の違法確認訴訟の原告適格が認められるのは、処分または裁決についての申請をした者です。現実に申請をした者であれば足り、申請が適法である必要はありません。
不作為の違法確認訴訟の訴訟要件のうち、被告適格、裁判管轄については、取消訴訟の規定が準用されます。
しかし、出訴期間の規定は準用されていませんから、不作為の違法確認訴訟は、不作為が続く限りいつでも提起することができます。ただし、申請から相当の期間が経過していることが必要です。
また、処分や裁決は存在しませんから、執行停止の余地はなく、執行停止制度も準用されません。
◇訴訟の特徴
不作為の違法確認訴訟で勝訴した場合の判決は、単に行政庁の不作為が違法であることを確認し、不作為庁に対して申請者からの申請への応答を義務づけるにすぎません。その結果、原告(申請者)の申請に対し拒否処分がなされる可能性があるため、義務付け訴訟が定められています(不作為の違法確認訴訟と義務付け訴訟を併合提起する)。
◆義務付け訴訟・差止め訴訟等
行政庁への干渉となるため、義務付け訴訟・差止め訴訟の提起には、一定の要件が設けられている。
◎義務付け訴訟
◇義務付け訴訟とは
義務付け訴訟(義務付けの訴え)とは、行政庁がその処分または裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟のことです。義務付け訴訟のメリットは、特定の処分を求めることが可能になったため、国民の権利利益の救済が直接的にかつ迅速に実現できるというところにあります。
義務付け訴訟と不作為の違法確認訴訟とは、次の点で異なります。
◇義務付け訴訟
特定の処分を求める
→一定の処分または裁決をすべき旨を命ずることができる
◇不作為の違法確認訴訟
不作為の違法を確認するのみ
→特定の処分の義務付けはできない
◇訴訟要件
義務付け訴訟は、申請を前提としない1号義務付け訴訟と、申請を前提とする2号義務付け訴訟とに分けられます。義務付け訴訟は、特定の処分の発動を求めるものですから、裁判所による処分内容の決定権限をもつ行政庁への干渉となりかねません。そこで、一定の要件を満たす場合に限り提起することができます。
被告適格、裁判管轄については、取消訴訟の規定が準用されます。出訴期間の規定は準用されませんが、取消訴訟を併合定期する場合には、取消訴訟の出訴期間の制限を受けます。また、執行停止制度の準用もありません。
◎差止め訴訟
差止め訴訟(差止めの訴え)とは、行政庁が一定の処分または裁決をすべきでないにかかかわずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟のことです。
◇訴訟要件
国民の権利利益の救済という観点からは、権利りえきが 侵害される前に救済をする制度ですから、より望ましい救済方法といえます。しかし、いまだ権力の行使がなされていない段階で予防的に訴訟を認めると、行政庁の判断権限を侵すことにつながります。そこで、両者の調和を図るための要件が定められています。
◇原告適格
行政庁が一定の処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者
◇提起の要件
①一定の処分または裁決がなされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合であること
②その損害を避けるため他に適当な方法がないこと
被告適格、裁判管轄については取消訴訟の規定が準用されます。しかし、出訴期間の規定は準用されません。また、執行停止制度の準用もありません。
◎仮の義務付け、仮の差止め
仮の義務付け、仮の差止めとは、義務付け訴訟または差止め訴訟が提起された場合において、償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるときに、仮の救済処分を行わせる制度のことです。
義務付け訴訟や差止め訴訟を提起しても、その判決を待っていたのでは、訴えを起こした者や申請者が必要なときに必要な処分を受けることが困難となることがあります。そこで、これらの訴訟が提起されている場合の仮の救済処分として、仮の義務付けと仮の差止めという制度が設けられています。
◇積極的要件
①義務付けの訴えまたは差止めの訴えが提起されていること
②当事者からの申立てがあること
③償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること
④本案について理由があるとみえること
◇消極的要件
⑤公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき
◇手続
①執行停止に関する規定が準用される
②仮の義務付けの決定が取り消された場合、仮の義務付けを命じられていた行政庁は、その仮の義務付けの決定に基づいてした処分・裁決を取り消さなければならない
◆抗告訴訟以外の訴訟類型
行政事件訴訟法には、客観訴訟として、民衆訴訟および機関訴訟が定められている
◎当事者訴訟
当事者訴訟とは、行政側と国民とが対等の当事者の立場で互いの権利義務をめぐって争う訴訟をいいます。抗告訴訟とこの当事者訴訟をあわせて、主観訴訟といいます。
一方当事者が行政であるため、行政事件訴訟法に規定が設けられていますが、対等の当事者として争うのですから、当事者訴訟の審理手続は、通常の民事訴訟とほぼ同じになっています。当事者訴訟は、①形式的当事者訴訟と②実質的当事者訴訟とに分かれます。
◇形式的当事者訴訟
当事者間の法律関係を確認し、または形成する処分または裁決に関する訴訟で法令の規定により、その法律関係の当事者の一方を被告とするもの。
具体例としては、土地収用法に基づく土地収用についての損害補償に関する訴えがあります。
◇実質的当事者訴訟
公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟。具体例としては、国籍の確認訴訟、公務員の地位確認訴訟、公務員の給与支払請求訴訟、公営住宅に関する訴訟、損失補償請求訴訟があります。
◎客観訴訟
客観訴訟とは、当事者個人の利益の保護に関係なく、社会の利益のために提起される訴訟のことです。客観訴訟には、民衆訴訟と機関訴訟とがあります。
民衆訴訟と機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができます。
◇民衆訴訟
国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で定期するもの。
具体例としては、公職選挙法に基づく当選訴訟、議員定数不均衡訴訟、地方自治法上の住民訴訟などがある。
◇機関訴訟
国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟。
具体例としては、地方公共団体の長と議会の間での議決または選挙に関する訴訟、国や地方公共団体の関与に対して地方公共団体の機関が取消しを求める訴訟などがある。
◎争点訴訟
争点訴訟とは、私法上の法律関係に関する訴訟であって(その前提として)処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無が争われているもののことです。争点訴訟は、行政違憲訴訟でなく民事訴訟に該当しますが、訴訟における争点が行政行為の有効、無効であるため、行政事件訴訟に準じた扱いが要請されます。
争点訴訟の例としては、国による農地買収処分の無効を理由として、旧農地所有者が国から農地を購入した新所有者を相手方として提起する所有権確認の訴えがあげられます。
◆教示制度
行政庁は、取消訴訟を提起し得る処分・裁決をする場合、原則として、書面で教示する義務を負う。
◎教示制度の趣旨
行政事件訴訟は、一般に国民にとってなじみの薄い訴訟制度です。そこで、国民に対して裁判による救済を受ける機会を保証するため、教示制度が定められています。
◎取消訴訟における教示
◇教示制度の内容
行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分または裁決をする場合は、当該処分または裁決の相手方に対して次の事項を書面で教示しなければなりません。ただし、当該処分を口頭で行うときは、教示をしなくてもよいとされています。
①当該取消訴訟の被告とすべき者
②当該取消訴訟の出訴期間
③法律に、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、その旨。
◇裁決主義の定めがある場合の教示
行政庁は、処分についての審査請求に対する裁決に対してのみ取消訴訟を提起することができる旨の法律の定めがある場合(裁決主義)において、当該処分をするときには、相手方に対し、法律にその定めがある旨を書面で教示しなければなりません。ただし、当該処分を口頭で行うときは、教示をしなくてもよいとされています。
◇形式的当事者訴訟における教示
行政庁は、形式的当事者訴訟を提起することができる処分または裁決をする場合には、次の事項を書面で教示しなければなりません。ただし、当該処分を口頭で行うときは、教示をしなくてもよいとされています。
①当該訴訟の被告とすべき者
②当該取消訴訟の出訴期間
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◆行政事件訴訟法の概要
行政事件訴訟とは、行政上の法律関係で争いがある場合の訴訟のことになります。
この訴訟手続について定めた法律を、行政事件訴訟法と言います。
行政庁に対する不服申立手続には、費用、時間のコストが少ないというメリットがある半面で、行政内部の統制であるがゆえに、判断の公平性、中立性に問題があるというデメリットがあります。
憲法は、これを考慮して、適用か違法かの最終的な判断権を行政機関に与えることを禁じています。
ですから、行政事件についても、最終的には裁判所に判断を求めることができます。
そして、その手続法として、行政事件訴訟法が制定されています。
◆行政事件訴訟法の種類
行政事件訴訟法は、訴えの種類として、いくつかの形式を定めています。
行政事件訴訟は、主観訴訟と、客観訴訟に分けることができます。
主観訴訟は、抗告訴訟と当事者訴訟に分けることができます。
客観訴訟は、民衆訴訟と機関訴訟に分けることができます。
抗告訴訟の中に、取消訴訟があります。
現実には、訴えの大部分が取消訴訟になります。
(詳細→「取消訴訟とは・・」)
◆教示制度
従来、行政事件訴訟法には、行政不服審査法に定められている教示制度は置かれていませんでした。
この点については、国民の利益保護に十分でないとの批判がなされていました。
そこで、2004年改正において、教示制度が設けられることになりました。
もっとも、行政不服審査法と異なり、教示をしなかった場合の規定や、誤った教示をした場合の明文の規定はありません。
◎関連記事
・行政法とは・・
・行政救済法とは・・
・行政不服審査法とは・・
(記事作成日、平成29年3月30日)