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民法総則:代理とは・・


◆代理とは

 代理人が本人のためにすることを示して行った法律行為の効果は、直接本人に
 帰属します。

 たとえば、あなたは、別荘を買いたいのですが、日頃は仕事で忙しく、別荘地に
 自ら出向いて探す暇がないとします。そのようなとき、誰か不動産に詳しい人に、
 自分の代わりに希望の条件に見合う別荘を探して、契約をしてもらい、その結果
 だけ得ることができれば便利です。
 代理は、そのような要望をかなえる制度です。さらに、たとえば、未成年者の
 代わりに親がバイクの売買契約を締結するように、制限行為能力者の保護者の
 権限として代理権が認められる場合もあります。

 ◎代理とは

  代理とは、代理人が本人のためにすることを示して法律行為をし、その効果を
  直接本人に帰属させる制度をいいます。
  たとえば、AがBを代理人として使い、BがCの別荘を買う契約をした場合、
  代理人Bの契約行為によって、AとCとの間に別荘の売買契約が成立します。

 ◎代理が成立するための要件と代理の効果

  代理が成立するためには、三つの要件が必要となります。

  ◇代理の成立要件

   ①代理人に代理権があること
   ②代理人が本人のためにすることを示すこと(顕名という)
   ③有効に法律行為が行われること

  これらの要件が満たされた場合に代理は成立し、代理人が行った行為の効果は、
  本人に直接帰属します。したがって、Aは、自ら契約行為をしなくても、他人
  であるBが結んだ契約の効果を受け取るのです。

◆代理権

 任意代理は本人の意思により、法定代理は法律の規定により、代理人に代理権
 が与えられる。

 ◎代理権の発生原因

  代理権はどのように発生するのでしょうか。これは席にみたように、本人が
  取引行為を他人に頼むような場合のように契約によって代理権が発生する
  任意代理と、制限行為能力者の保護者のように法律の規定により、代理権が
  発生する法定代理とがあります。
  任意代理とは、本人の意思によって他人に代理権を与えることによる代理を
  いいます。法定代理とは、本人の意思に基づかず、法律の規定によって代理
  権を与えることによる代理をいいます。

  ◇代理権の発生原因とその範囲

   ◇任意代理

    発生原因は、本人の意思によって代理権が与えられる。範囲は、本人と
    代理人との間の代理権授与行為(契約)で決定する。権限の定めのない
    代理人は一定の行為のみができる。

   ◇法定代理

    発生原因は、法律の規定によって代理権が与えられる。範囲は、法律の
    規定により決められる。

 ◎代理権の制限-自己契約・双方代理

  ◇自己契約
   意味は、代理人が、本人を代理し、かつ、取引の相手方となること

  ◇双方代理
   意味は、代理人が、本人を代理し、かつ、取引の相手方の代理人になること

  ◇効果
   原則:無限代理行為となる
   例外:次の場合は有効な代理となる
      ①債務の履行
      ②本人があらかじめ許諾した行為

 ◎復代理とは

  復代理とは、代理人が自分の権限内の行為を行わせるため、自己の名で代理人
  (復代理人という)を選任して、本人を代理させることです。たとえば代理人
  が急病などで代理人としての行為を行うに耐えられない事情が発生したような
  場合に、自分の権限内の行為を他人に行わせるための制度です。
  なお、復代理人が選任されても、代理人の代理権は消滅しません。選任された
  復代理人は、あくまで本人の代理人であって、代理人の代理人となるのでは
  ありません。

 ◎代理権の消滅原因

  代理人は本人のために代理行為を行うのですから、その代理人が破産したり、
  後見開始の審判を受けたりするようなことがあっては、職務を全うできませ
  ん。逆に、本人に破産や後見開始の審判があっても、代理権は消滅しません。

 ◎代理権の濫用

  たとえば、AからA所有の土地を売却することの代理権を与えられたBが、
  Cと売買契約を締結する際に、Cから受領する売買代金で、自己の借入を
  返済する意図をもっていたとします。Cは注意を払ってもBの意図を知る
  ことができなかった場合に、三者間の法律関係はどのようになるのでしょ
  うか。
  このように、代理人が本心では自分か第三者の利益を図る意図をもって、
  客観的には顕名をして代理の要件を満たした権限内の行為をすることを
  代理権の濫用といいます。

  ◇代理権の濫用の場合の効果

   ◇原則
    形式上は顕名もなされ、有効な法律行為もあるから、代理が成立し、
    本人に効果が帰属する

   ◇例外
    代理人の意図を相手方が知り、または知ることができた場合は、悪意
    または有過失の相手方を保護する必要はなく、代理行為を無効とし、
    本人に効果は帰属しない

◆代理行為

 代理行為は、原則として、本人のためにすることを示して(顕名)、しなければ
 ならない。

 代理行為とは、代理人が本人のためにすることを示して法律行為をすることです。

 ◎顕名

  顕名とは、代理人が本人のために代理行為を行うことを、相手方に示すこと
  です。

  ◇顕名をしなかった場合

   ◇原則
    代理行為とならず、代理人が自らのために行為したとみなされる

   ◇例外
    相手方が、代理人が本人のために行為するのを知っていたか、知ることが
    できたときは、有効な代理行為となる

 ◎代理人の能力

  代理人は制限行為能力者であってもよいのでしょうか。たとえば、未成年者で
  あっても、20歳に満たないだけで、取引に関する能力は大人顔負けの者も
  いたりします。そのような者の実務能力を見込んで本人の判断で代理人として
  も、何らかまいません。
  なぜなら、代理制度では代理人の行為は直接本人に効果が帰属し、代理人が
  法律行為の結果として不利益を受けることはありません。したがって、制限
  行為能力者を代理人とすることもできます。

 ◎代理行為の瑕疵

  代理においては、契約当事者の一方として、本人と代理人とがかかわって
  います。そこで、当事者の意思表示の瑕疵、善意や悪意が問題となる場合は、
  原則として、その事実の有無は代理人について判断することになっています。
  現実に意思表示をするのは代理人だからです。
  しかし、特定の法律行為を頼まれた場合に、代理人が本人の指図に従って
  その代理行為をしたときは、本人が知っていた事情について、代理人がそれ
  を知らなくても、本人は代理人が知らなかったことを主張できません。本人の
  指図で動いている以上、本人についてその事情の有無を判断するべきだから
  です。

◆無権代理

 無権代理行為の相手方は、善意無過失であれば、無権代理人の責任を追及する
 ことができる。

 ◎無権代理とその効果

  ◇無権代理とは

   無権代理とは、代理権を有しない者が代理人と称して行った行為をいいま
   す。代理権がないのに代理人と称して行為をする者を無権代理人といいま
   す。

  ◇無権代理行為の効果

   無権代理の場合は、原則として、本人に効果は帰属しません。勝手に売買
   などをされてしまい、本人にその効果が帰属するのは、余りに乱暴すぎる
   話だからです。
   しかし、無権代理人の行った行為がたまたま本人にとって都合がよい場合
   もあり得るでしょう。そのような場合は本人が追認することにより、代理
   の効果は契約時にさかのぼあって本人に帰属します。逆に、無権代理人の
   行為を認めたくない場合には、追認を拒絶することができます。追認拒絶
   により、代理行為の効果が本人に帰属しないことが確定します。

 ◎無限代理の相手方の保護

  無権代理の相手方は、どうすればようでしょうか。ここでは、相手方の善意
  または悪意といった事情(主観的な事情)によって、保護の厚みを変えて
  対応しています。
  まず、たとえ相手方が無権代理人であることについて悪意であっても、本人
  が追認してくれるかもしれませんから、追認するかどうか決めてもらう催告
  権を相手方はもっています。
  次に相手方が無権代理行為について善意の場合は、取消権を行使することが
  できます。この取消権は、本人が追認をするまでの間に行使する必要があり
  ます。
  最後に、相手方が無権代理行為について善意無過失の場合に、本人が追認を
  しないときは、相手方の選択により無権代理人に対し履行または損害賠償を
  請求することができます。

 ◎無権代理と相続

  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を
  承継します。したがって、本人と無権代理人との間で相続が発生することに
  よって、無権代理人の立場を本人が相続する、あるいは本人の立場を無権
  代理人の立場を本人が相続する、あるいは本人の立場を無権代理人が相続
  するということが生ずることがあります。

◆表見代理

 表見代理は、無権代理において一定の事情がある場合に、本人に効果を帰属
 させるものである。

 ◎表見代理とは

  無権代理であっても、本人と無権代理人との間に何らかの関係がある結果、
  相手方に代理権があると信じさせる特別な事情が認められる場合には、通常
  の代理と同じ効果を発生させて相手方を保護していいます。これが表見代理
  です。

  ◇表見代理の種類

   ◇代理権授与の表示による表見代理

    内容は、実際には代理権を与えてないが、AがBに代理権を与えたとの
    表示を相手方Cにしたような場合です。例えば、委任状を手渡す等が
    あります。
    要件は、①他人に代理権を与えたと表示すること、②表示された無権
    代理人が、表示を受けた相手方と表示の範囲内の代理行為をしたこと、
    ③相手方が善意無過失であることです。

  ◇権限外の行為の表見代理

   内容は、家を貸す代理権を与えたのに、売却してしまったような場合です。
   要件は、①契約等の法律行為をすることの基本代理権があること、②基本
   代理権を超えて代理行為があったこと、③相手方の正当な理由(善意無過
   失)であることです。

  ◇代理権消滅後の表見代理

   内容は、代理権が期限切れ等で消滅したにもかかわらず、代理行為をした
   ような場合です。要件は、①代理権があった者の代理行為、②相手方が
   代理権の消滅につき善意無過失であることです。

 ◎表見代理の効果

  表見代理が成立する場合、無権代理人の行った行為の効果が本人に帰属し、
  本人が責任を負います。ただし、相手方は、本人が追認するまでの間は、
  取消権を行使することができます。また、相手方は、表見代理を主張せずに、
  無権代理人の責任を追及することができます。
 






 

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(記事作成日、平成29年4月25日)



 

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