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憲法:財政とは・・


国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

◆財政の基本原則

 ◎財政民主主義

  ◇憲法83条
  「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければ
   ならない。」

  財政とは、国家が、その任務を行うために必要な財力を取得し、管理し、
  使用する作用のことです。つまり、国家が、国民から税金を徴収し、予算を
  組み、それに基づいて支出をするという一連の行為をいいます。
  国家に必要な財力を負担するのは、私たち国民ですから、財政は適正に運営
  されなければ困ります。そこで、日本国憲法は、他の一般行政作用と区別
  して特に一章を設け、財政に国会のコントロールを強く及ぼす、財政民主
  主義をとっているのです。

 ◎租税法律主義

  ◇憲法84条
  「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の
   定める条件によることを必要とする。」

  ◇租税とは

   租税とは、国または地方公共団体が、その課税権に基づき、特別の役務に
   対する反対給付としてではなく、その経費に充てるため、一方的、強制的に
   賦課徴収する金銭のことです。

  ◇租税法律主義の内容

   租税法律主義のおもな内容として、課税要件法定主義および課税要件明確
   主義があります。

   ◇課税要件法定主義
    納税義務者、課税物権、課税標準、税率等の課税要件と、税の賦課および
    徴収の手続が、法律で定められなければならない。

   ◇課税要件明確主義
    課税要件、賦課および徴収を定める手続は、誰でもその内容を理解できる
    ように、明確に定めなければならない。

   課税要件法定主義と課税要件明確主義によって、新たな課税や現行の租税の
   変更に関して国民が予測可能となり、租税に関する法律への国民の信頼が
   維持されます。
   なお、租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において
   租税に類似する性質を有するものには、84条の趣旨が及びます。

  ◇租税法律主義と条例による課税

   条例は、地方住民の代表である地方議会で定める自主法ですから、条例に
   より「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更」しても、84条の
   趣旨には反しないといえます。
   したがって、84条の規定する法律には、条令も含まれます。

   ◇憲法89条
   「公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益
    若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは
    博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」

   89条前段は、宗教上の組織もしくは団体への公金の支出を禁止すること
   により、政教分離の原則を財政面から保障することを目的としています。
   89条後段は、公財産の濫用を防止し、慈善事業等の営利的傾向ないし
   公権力に対する依存性を排除するための規定であると考えられます
   (公費濫用防止説)。

◆予算および決算

 まず前提として、国費の支出および国の債務負担行為は、国会の議決に基づく
 ことが必要であるとする規定があります。

 ◎憲法85条
 「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要
  とする。」

 ◎予算

  ◇憲法86条
  「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け
   議決を経なければならない。」

  ◇予算の法的性格

   予算の法的性格は、一般の法律とは異なる特殊の法形式であると考えられ
   ます(予算法形式説、多数説)。財政民主主義の観点から、予算は政府を
   拘束する法規範と考えるべきです。しかし、予算は、次の点で法律と
   異なるため、法律だとはいいきれないものがあるのです。

   ◇予算は政府を拘束するのみで、一般国民を直接拘束しない
   ◇提出権が内閣に属する
   ◇衆議院に先議権が認められている
   ◇衆議院の再議決権が認められていない
   ◇予算の効力は一会計年度に限定される

  ◇予算案の修正

   予算案について、全面的否決権をもつ国会は、減額の修正権ももつと
   考えられます。また、財政民主主義を強調する立場では、増額修正も
   認められることになります。

  ◇予算と法律の不一致

   次の二つの場合が考えられます。

   ◇予算を必要とする法律が成立したが、その執行に要する予算が不成立の
    場合
    →内閣は、法律を誠実に執行する義務を負っているので、補正予算や
     予備費支出等の方法で対処すべき

   ◇予算は成立しているが、その予算の執行を命ずる法律が不成立の場合
    →内閣は、支出を実行できず、法律案を国会に提出し、議決を求める。
     他方、国会は法律制定の義務を負わない。

  ◇予備費

   ◇憲法87条
   「1、予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を
      設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
    2、すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を
      得なければならない。」

 ◎決算

  ◇憲法90条
  「1、国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、
     内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しな
     ければならない。
   2、会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」

  国の収入支出に、事後的なコントロールを及ぼすものです。

 ◎財政状況の報告

  ◇財政状況の報告

   ◇憲法91条
   「内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎回1回、国の財政
    状況について報告しなければならない。」

   報告は国会のみでなく、国民に対しても直接行われる必要があるので、
   本条が規定されています。


 







 

 

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(記事作成日、平成29年5月31日)



 

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