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民法総則:権利の主体・客体


◆権利の主体

 契約を一人で確定的に有効に行うためには、権利能力、意思能力のほか、行為
 能力が必要である。

 ◎権利能力

  私たちは、日頃当たり前のようにお店でパンを買ったり、インターネットの
  オークションで不要となった物を売ったりしています。これは、私たち自身
  が主体となって契約などにより権利を得たり、義務を負ったりすることを
  認められているということを意味します。
  このように、権利義務の主体となることができる資格を権利能力といいます。
  権利能力を有するのは、生身の体をもつ私たち自然人と会社などの法人です。

  ◇自然人の権利能力の始期

   ◇原則
    出生の時

   ◇例外
    胎児がすでに生まれたものとみなされる場合
    ①不法行為に基づく損害賠償請求
    ②相続
    ③遺贈を受ける場合

  ◇自然人の権利能力の終期

   ①死亡

   ②失踪宣告
    不在者につき生死不明の状態が継続した場合に、一定の条件の下でその者
    を死亡したものとみなして、法律関係を安定させる制度

 ◎意思能力・行為能力

  ◇意思能力とは

   他人と契約を結ぶ場合には、その契約によって自分がどのような権利を取得
   し、義務を負うか、判断する能力が必要となります。そのような能力が必要
   となります。そのような能力があれば、契約自由の原則に則って自分で決め
   て行ったことだから責任をとりなさい、ということができます。
   そこで、民法は契約をする人にはまず意思能力が必要だとしています。意思
   能力とは、自分の行った行為の結果を正常に判断することができる精神能力
   をいいます。この意思能力を有しない者を意思無能力者といいます。意思
   無能力者の行為は無効です。

  ◇行為能力とは

   行為能力とは、契約などの法律行為を一人で有効に、確定的に行う高度の
   判断能力をいいます。契約を行う場合に、契約を有効とするためには意思
   能力のほかに、行為能力も必要です。

 ◎制限行為能力者

  ◇制限行為能力者制度とは

   ところで、民法はなぜ、意思能力のほかに行為能力も必要というように、
   能力を二つに分けて考えるのでしょうか。
   初対面の人に意思能力があるかないか、間違うことなく判断するのが困難な
   場合もあるでしょう。
   また、意思無能力者の側が行為の時に意思無能力であったことを、そのつど
   証明するのも大変でしょう。
   また、意思無能力者の側が行為の時に意思無能力であったことを、そのつど
   証明するのも大変でしょう。
   そこで、民法は意思能力のない者やその不十分な者を、画一的に制限行為能
   力者と定めて、取引の相手方に契約前から判断しやすいようにして取引の
   安全を図っているのです。同時に、これらの者に保護者をつけて取引能力の
   不足を補い、この者が一人で行った契約を解消しやすくして、制限行為能力
   者と取引の相手方との利害調整を図っています。これが制限行為能力者制度
   です。
   制限行為能力者は、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4種類
   です。

   ◇自然人

    ◇行為能力者

    ◇制限行為能力者
     ・未成年者
     ・成年被後見人
     ・被保佐人
     ・被補助人

  ◇未成年者

   未成年者とは、20歳未満の者をいいます。例外として、20歳未満で
   あっても婚姻をした者は成年者とみなされます。
   未成年者が保護者の同意を得ずに一人でした法律行為は、取り消すことが
   できます。
   ただし、保護者の同意がある場合のほか、次の行為は例外として、未成年
   者が一人でしても問題がないので有効となり、取り消すことができません。

   ◇保護者の同意が不要な未成年者の行為

    ◇単に権利を得、または義務を免れる行為
     具体的には、何の負担もない贈与を受ける、借金を免除される

    ◇処分を許された財産の処分
     もらったお小遣いで本を買う

    ◇許可を受けた営業に関する行為
     親の跡を継いで家業を行う

   未成年者には保護者(法定代理人)として、親権者または未成年後見人が
   つけられます。法定代理人の権限には次の表に示す4種類があります。

   ①同意権 未成年者の行為にあらかじめ同意を与える権利
   ②取消権 未成年者が同意を得ずに行った行為を取り消す権利
   ③追認権 未成年者が同意を得ずに行った行為を追認する権利
   ④代理権 未成年者の代わりに行為する権利

  ◇成年被後見人

   成年被後見人とは、精神上の障害によって、判断能力を欠く常況にある者
   で、家庭裁判所で後見開始の審判を受けた者をいいます。
   成年被後見人が一人で行った法律行為は、原則として取り消すことができ
   ます。
   ただし、成年被後見人が行う、日用品の購入その他日常生活に関する行為
   については、一人で有効に行うことができるので、取り消すことはできま
   せん。
   成年被後見人には保護者として、成年後見人がつけられます。その権限と
   して、①取消権、②追認権、③代理権があります。同意権は与えられてい
   ません。
   なお、すでに成年後見人が選任されている場合でも、さらに政権後見人を
   選任することが認められています。成年被後見人に対する保護が厚くなる
   からです。

  ◇被保佐人

   被保佐人とは、精神上の障害によって、判断能力が著しく不十分な者で、
   家庭裁判所で保佐開始の審判を受けた者をいいます。
   被保佐人は、原則として一人で法律行為を行うことができます。例外とし
   て、たとえば不動産の売買契約など、重要な財産上の法律行為については、
   保護者である保佐人の同意を得ずにしたときは、取り消すことができます。
   ただし、成年被後見人と同様に、日用品の購入その他日常生活に関する
   行為については、一人で有効に行うことができるので、取り消すことは
   できません。
   被保佐人の保護者である保佐人には、①取消権、②同意権、③追認権が
   あります。さらに家庭裁判所の審判により、特定の法律行為につき保佐人
   に④代理権を与えることができます。

  ◇被補助人

   被補助人とは、精神上の障害によって、判断能力が不十分な者で、家庭
   裁判所で補助開始の審判を受けた者をいいます。
   被補助人は、原則として一人で法律行為を行うことができます。例外とし
   て、重要な財産上の法律行為について定めた13条1項の各行為のうち、
   被補助人の精神状態を判断し家庭裁判所が決めた特定の法律行為について
   は、一人で行うことができません。この場合に、保護者である補助人の
   同意を得ずにした法律行為は、後で取り消すことができます。
   被補助人の保護者である補助人は、家庭裁判所の審判により、特定の法律
   行為について、①取消権、②同意権、③追認権を与えられます。
   さらに家庭裁判所の審判により、特定の法律行為につき補助人に④代理権
   を与えることができます。

  ◇取消しの効果と返還義務

   制限行為能力者または保護者から法律行為の取消しがなされると、どうなる
   でしょうか。取り消された法律行為は、行為の時にさかのぼって無効となり
   ます。
   なお、制限行為能力を理由とする取消しの場合には、制限行為能力者は、
   その行為によって現に利益(現存利益という)を受けている程度で、返還の
   義務を負います。制限行為能力者の保護を考えて、返還義務の範囲を限定
   したのです。

 ◎制限行為能力者の相手方の保護

  このように、制限行為能力者は手厚い保護を受けますが、制限行為能力者と
  取引をする相手方にはどのような配慮がされているでしょうか。民法は四つ
  の方法を定めて、突然の取消しを受ける可能性がある取引の相手方を保護
  しています。

  ◇催告権

   制限行為能力者の取引の相手方は、制限行為能力者側に対して、取り消す
   のか追認するのか、確答を求めることができます。これを催告といいます。
   制限行為能力者の保護者や、能力を回復した後の本人(行為能力者)に
   対して催告を行った場合には、その者たちが無視すれば、追認したものと
   みなされます。

  ◇制限行為能力者の詐術

   制限行為能力者が自分を行為能力者であると信じされるため詐術を用いた
   ときは、制限行為能力者を保護する必要がありませんから、取り消すこと
   ができません。

  ◇法定追認

   はっきりと追認すると言われなくても、常識から考えて追認したと認めて
   いい事実がある場合には、法律上、追認したのと同じ効果を認めます。
   これが法定追認です。

  ◇取消権の期限制限

   いつまでも取消権があると、相手方は不安定な立場のままです。そこで、
   追認ができる時から5年、行為の時から20年経つと、取消権が消滅する
   と定められています。

◆法人

 法人は、法令の規定に従い、定款等の基本約款で定められた目的の範囲内で、
 権利能力を有する。

 ◎法人とは

  自然人以外に権利主体となるのが法人です。現代社会では、自然と別に、
  さまざまな団体や組織が社会経済活動を行っています。そこで、このような
  存在に権利能力を与え、契約の当事者となったり、財産を保有したりする
  ことを認めています。

 ◎法人の種類

  ◇公法人と私法人

   公法人とは、国や、法人格をもつ公共団体(都道府県や市町村といった
   地方公共団体など)をいいます。
   私法人とは、公法人以外の法人をいいます。私法人は、社団法人や財団法
   人、公益法人や営利法人に分けられます。

  ◇社団法人と財団法人

   社団法人とは、自然人が集まった団体に権利能力が与えられたものです。
   財団法人とは、財産に権利能力が与えられたものです。たとえば、行政書士
   試験研究センターは財団法人です。
   社団法人および財団法人の根本規定を定款といいます。

  ◇公益法人と営利法人

   公益法人とは、学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業を目的とする
   法人をいいます。営利法人とは、営利事業を営むことを目的とする法人を
   いいます。営利法人の代表は会社です。

 ◎法人の権利能力

  法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内
  で、権利を有し、義務を負います。目的の範囲内の行為か否かは、その行為が
  法人の活動上必要な行為でありゆるかどうかを客観的、抽象的に観察して判断
  されます。
  なお、法人と同様の社団としての実質を備えながら、法人格をもたない団体の
  ことを権利能力なき社団といいます。その名のとおり、権利能力なき社団には
  権利能力が認められていません。

◆権利の客体

 権利の客体となる物は、土地およびその定着物である不動産と、不動産以外の
 動産に分けられる。

 ◎不動産・動産

  自然人や法人は、財産をめぐって取引行為をします。つまり、権利の客体は
  財産ですが、民法は権利の客体として「物」について規定しています。物は
  不動産と動産に分かれます。
  不動産とは、土地およびその定着物をいいます。土地の定着物の典型は、
  建物です。たとえば、建物は土地と分離して不動産取引の対象となります。
  動産とは、不動産以外の物をいいます。

 ◎主物・従物

  物のなかには、たとえば、刀とさや、屋敷の母屋と離れというように、それ
  ぞれは独立している物がいわば主従の関係に立つ場合があります。このように、
  物の所有物が、その物(主物)の常用に供するため、これに付属させた自己の
  所有物を従物といいます。そして、主従関係に立つ物どうしの処理の基準は、
  「従物は、主物の処分に従う」ことになります。

 ◎天然果実・法定果実

  物は、それがもととなって利益を生み出すことがあります。たとえば、ミカン
  の木は収穫期にミカンの実を実らせますし、賃貸マンションは賃料を生み出し
  ます。
  ミカンの実のように、元物から自然にとれる物のことを天然果実といいます。
  これに対し、賃貸マンションの賃料のように、元物の利用に対する対価のこと
  を法定果実といいます。








 









権利能力とは、権利や義務の主体となりうる能力をいいます。

つまり、その名において権利を持ったり、義務を負える、
例えば、その名において、モノを売ったり、買ったりとか、
お金を貸したり、借りたりとかができるという能力のことを
権利能力と言います。

民法は3条1項で、権利の「享有は、出生に始まる」と規定して
います。

つまり、権利能力の始めは出生から、としています。

逆に、終わりは、死亡のみです。

したがって、生きている人間であれば、権利能力は平等に持ちます。

生まれたばかりの赤ちゃんでも、権利能力は持ちます。

時間の流れていうと、権利能力は出生から死亡までということに
なります。

ただ、そうだとすると、出生前、つまり、まだお母さんの
お腹の中にいる胎児には権利能力がないことになります。

しかし、この原則を貫くと不都合が生じるので、
例外が3つだけあります。

◆法行為に基づく損害賠償請求権
◆相続を受ける権利
◆遺贈を受ける権利


民法では、アンバランスを避けるために、例外を設けています。

例外的に権利能力を認めた形になります。




 

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(記事作成日、平成29年4月10日)



 

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