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民法:債権とは・・


債権とは、ある人が特定の人に対して特定の行為を要求する権利のことを
言います。


債務とは、特定の行為を特定の人へなすべき義務のことになります。

たとえば、土地を売買した場合に、買主は売主に対して、
土地の引渡債権を取得する反面、代金債務を負います。

物権は、物を直接的に支配する権利で、目的物は物であったのに対して、
債権は、債務者に一定の行為を請求する権利になり、
債権の目的は、債務者の一定の行為(給付)ということになります。

債権は、いつまでも行使しないで放っておくと、時効により消滅して
しまいます。


◆物件との違い

 債権は、特定の人に対して同一内容の債権が多数併存することが
 できます。

 たとえば一つの不動産の売買契約を複数の人と締結することができます。

 つまり、債権には、物権にある排他性が認められません。

 また、債権は、債務者の行為を通じて、債務内容を実現します。

 つまり、物権にある直接性も認められないのです。

 さらに、物権はすべての人に対して権利の主張ができます。

 しかし、債権は、特定の人に対してだけ、権利の主張をすることが
 認められています。


◆債権の種類とは・・

 債権の発生原因としては、契約、事務管理、不当利得及び不法行為の
 4つを規定しています。
 (詳細→「債権の発生原因とは・・」

 債権の種類としては、特定物債権、種類債権、金銭債権、利息債権、
 選択債権があります。

 ◎特定物債権

  特定物債権とは、具体的な取引において当事者が目的物の個性に着目し、
  その物の引渡しを目的とする債権を言います。

  たとえば、中古の一戸建て住宅の売買契約における家屋の引渡請求権や、
  中古車売買契約における車の引渡請求権などになります。


 ◎種類債権

  種類債権とは、当事者が物の個性に着目せず、一定の種類に属する
  一定の数量の物の引渡しを目的とする再建を言います。

  たとえば、新車の売買契約における車の引渡請求権や、
  ビール1ケースの売買契約におけるビールの引渡請求権などになります。

  種類債権は、給付の目的物が種類と数量によって抽象的に
  定められているだけなので、実際に給付をするにあたっては、
  目的物を具体的に特定する必要があります。

  これを種類債権の特定と言います。

  目的物が特定すると、それ以後は、その物が債権の目的物となり、
  債務不履行や危険負担の問題が生じます。

  民法は、種類債権が特定する場合として、債務者が給付に必要な行為を
  完了したときと、債権者の同意を得て給付すべき物を指定したときという
  二つの場合を想定しています。

  たとえば、ビール1ケースの配達という債務は、民法上、
  債権者の住所で履行すべき債務となります。

  よって、債務者の自宅等の住所地で、債務者がビール1ケースを
  差し出して債権者が受け取れるようにした時に特定します。

  そして、特約がない限り、目的物が特定した時に所有権も債権者に
  移転します。


 ◎金銭債権

  金銭債権とは、一定の金銭の給付を目的とした債権を言います。

  たとえば、3000万円で不動産の売買契約を結んだ場合、
  売主が買主に売買代金3000万円の支払いを請求するという債権が
  金銭債権になります。


 ◎利息債権
  利息債権とは、利息の支払いを目的とする債権を言います。

 ◎選択債権

  選択債権とは、数個の給付の中から選択によって定まる債権を言います。

  たとえば、Aという馬とBという馬のうち、どちらか1頭を
  引き渡すことを内容とする債権で、契約の時点では、まだとらいにするか
  決まっていない場合です。

  選択債権の場合、どちらにするかの選択権は、特約で選択権者を
  定めない限り、債務者に属します。

  また、弁済期にある債権については、選択権者が選択しないときは、
  相手方に選択権が移ります。

 ◎各債権と履行不能との関係

  ◇特定物債権
   特定物が滅失するか、他へ確定的に譲渡された場合に履行不能となる。

  ◇種類債権
   一定の種類の属する目的物が市場に存在する限り、
   履行不能とはならない。

  ◇金銭債権
   なし。履行延滞となるだけ。

◆債権譲渡

 ◎債権譲渡の概要

  債権は自由に譲渡できるのが原則であるが、特約や法律により制限されること
  がある。

  ◇債権譲渡とは

   債権譲渡とは、債権者が債務者に対して有する債権を他人に移転する契約
   をいいます。契約ですから、債権者である譲渡人と、この債権を買う
   譲受人との間の合意があれば、債権譲渡は有効に成立します。

  ◇債権の譲渡性

   ◇債権の自由譲渡性

    債権は財産的な価値のある権利ですから、原則として、不動産や貴金属
    などの動産と同じように取り扱うことができます。債権者は弁済期まで
    待って弁済を受けるほか、その債権を譲渡して、債権取得のために投じ
    た資本を回収することができます。つまり、債権は自由に譲渡できるの
    が民法の原則です。

   ◇自由譲渡の例外

    前記のとおり、債権は自由に譲渡できるのが原則です。しかし、次のよ
    うな場合には債権の譲渡が制限されます。

    ◇債権の性質による制限
     債権者が変わることにより、義務や権利の内容が変わる場合には、
     債権を譲渡することができない。たとえば、会社が労働者に対して
     働くよう請求する権利がこれにあたる

    ◇譲渡禁止の特約による制限

     契約当事者の意思表示(特約)による譲渡の制限として、譲渡禁止
     特約が認められている。譲渡禁止の特約に違反した債権譲渡は原則
     として無効であり、譲渡の効力は生じない

    ◇法律による制限

     法律により譲渡が禁止されている場合の例として、子が親に養って
     もらう扶養請求権がある

 ◎債権譲渡の対抗要件

  確定日付のある証書による債権譲渡通知が複数ある場合、通知が到達した
  日時の早いほうが優先する

  ◇債務者に対する対抗要件

   債権者が特定している債権を指名債権といいます。ここでは、一般的で
   ある指名債権の譲渡の対抗要件を説明します。
   債権が譲渡された場合の債務者に対する対抗要件は、債権者から債務者
   への通知または債務者の承諾です。

   ◇通知

    債権譲渡の通知は、債権が譲渡された事実を知らせる行為であり、譲渡人
    である債権者から債務者に対してなされます。譲受人からの通知は対抗
    要件となりません。

   ◇承諾

    承諾は、債務者が債権譲渡の事実を認識した旨の表明であり、その相手方
    は譲渡人または譲受人のいずれでもかまいません。

  ◇異議をとどめない承諾

   異議をとどめない承諾とは、債務者が債権譲渡を無条件で承諾することで
   す。
   本来、債務者は、債権が譲渡されても、譲渡人に対抗できる事由があるとき
   は、譲受人に対してもそれを対抗することができます。しかし、債務者が
   異議をとどめないで債権譲渡を承諾した場合、譲渡人に対抗できる事由が
   あっても、譲受人に対しては対抗することができなくなります。

  ◇債権の二重譲渡(債務者以外の第三者に対する対抗要件)

   債権の二重譲渡とは、たとえば、譲渡人が譲受人に債権を移転させる契約
   をした後に、別の譲受人に同じ債権を移転させる契約をする場合のことで
   す。
   まず、二重譲渡における譲受人どうしは互いに「第三者」にあたりますの
   で、譲受人は対抗要件を具備しなければ債権の譲受けを他の譲受人に対抗
   することができません。この場合の債権譲渡の対抗要件は、確定日付のある
   証書による債務者への通知または確定日付のある証書による債務者の承諾
   です。
   次に、第一譲受人と第二譲受人の両方が対抗要件を具備することもあり得
   ます。この場合には、譲受人間の優劣は、次のように決定されます。

   ◇譲受人間の優劣を決する基準時

    対抗要件の種類が、確定日付のある証書による通知の場合、基準時は、
    通知が到達した日時になります。
    対抗要件の種類が、確定日付のある証書による承諾の場合、基準時は、
    承諾の日時になります。

   注意すべきは、確定日付のある証書による通知が到達した日時が早いか
   どうかで優劣が決せられる点です。つまり、確定日付がいくら早くても、
   債務者に到達するのが遅ければ、債権の譲受人とはなれないのです。

◆債権の消滅

 ◎債権の消滅の概要

  債権は、その目的である給付内容の実現が不能ないし不必要となったときも、
  消滅します。

  債権の目的である給付内容が実現されると債権は消滅します。このほか、
  目的が実現できないことが確定した場合にも債権は消滅します。また、目的
  の消滅以外にも、次の表に示す原因により債権は消滅します。

  ◇債権の消滅原因

   ◇目的の消滅による場合

    ◇目的の実現による消滅

     ◇弁済
      債務者が債務の目的である給付内容を債務の本旨に従って実現する
      行為

     ◇代物弁済
      本来の給付とは異なる他の給付を現実にすることによって債権を消滅
      させる、債権者と債務者との間の契約

     ◇供託
      債務者が弁済すべき物を債権者のために供託所に寄託して債務を消滅
      させる行為

    ◇目的の実現不能による消滅

     債務者の責めに帰することのできない事由により履行が不可能となった
     場合

   ◇目的の消滅以外の原因による場合

    ◇目的の実現が不必要となったことによる消滅

     ◇相殺
      債権者と債務者とが相互に同種類の債権を有する場合に、それらを
      相当額において消滅させる一方的な意思表示

     ◇更改
      債権の要素を変更することによって、新債権を成立させるとともに
      旧債権を消滅させる契約

     ◇免除
      債権を無償で消滅させる、債権者の一方的な意思表示

     ◇混同
      同一の債権について、債権者の地位と債務者の地位が同一人に
      帰属すること

    ◇一般的な権利の消滅事由

     取消し、解除、消滅時効の援用等

 ◎弁済

  弁済は、①弁済をする者、②弁済を受領する者、③内容、④場所、⑤方法の
  観点から整理する。

  ◇弁済とは

   弁済とは、債務者が債務の目的である給付内容を債務の本旨に従って実現
   する行為をいいます。

  ◇弁済の要件

   弁済の効力が認められるためには、次に示す一定の要件を満たさなければ
   なりません。

   ◇弁済をする者

    弁済の効力が認められるためには、次に示す一定の要件を満たさなけれ
    ばなりません。

    ◇弁済をする者

     債務の弁済をするのは、通常は債務者および弁済の権限を有する者
     です。ただし、債権者としては、弁済さえなされれば弁済する者が
     誰であってもよいという場合もあります。また、債務者以外の第三者
     が、債務者に代わって弁済をしたいと考えることもあります。そのため、
     民法は原則として第三者が弁済することを認めています。これを第三者
     の弁済といいます。
     ただし、次の場合には第三者の弁済はできません。

     ①債務の内容が債務者自身でなければ目的を実現することができない
      ものである場合
     ②当事者が反対の意思表示をした場合
     ③利害関係を有しない第三者が弁済する場合に、その弁済が債務者の
      意思に反するとき

    ◇弁済を受領する者

     弁済を受領することができるのは、原則として債権者です。しかし、
     債権者ではない者にした弁済が有効とされる場合があります。

    ◇弁済の内容

     弁済の内容は、まず当事者間の契約の趣旨により定まります。
     なお、譲渡につき行為能力の制限を受けた所有者が弁済として物を
     引き渡した場合は、その弁済を取り消すことができます。ただし、
     その物を取り戻すには、さらに有効な弁済をしなければなりません。
     同様に、他人の物を弁済として引き渡した者も、さらに有効な弁済
     をしなければ、その物を取り戻せません。

    ◇弁済の時期

     弁済の時期は、通常、契約や法律の規定により定まります。これらに
     よって定まらない場合は、一般の取引慣行や信義則に従って定めること
     となります。

    ◇弁済の場所

     弁済をどこでなすべきかは、通常、当事者間の契約で定められ、それ
     に従うこととなります。契約に定めがなければ、次のように民法の
     定めに従います。
     特定物の引渡しは、債権発生の時にその物が存在した場所で行うこと
     とされています。したがって、債権者がその場所まで目的物を受け取
     りにいくことになります。このような債務を取立債務といいます。
     特定物の引渡債務以外の債務については、債権者の現時の住所で弁済
     することとなります。このような債務を持参債務といいます。

     ◇契約に定めがない場合の弁済の場所

      ◇特定物の引渡し
       弁済の場所は、債権発生の時にその物が存在した場所

      ◇上記以外の債務
       弁済の場所は、債権者の現時の住所

    ◇弁済の方法

     債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は引渡しをするま
     で、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければなりませ
     ん。

  ◇弁済の効果

   弁済がなされると、債権は目的を達成して消滅します。
   また、第三者の弁済があった場合は、この第三者から債務者への求償権を
   確保するため、債権者が債務者に対して有していた担保権などの権利が
   弁済をした第三者に移転することがあります。これを弁済による代位と
   いいます。たとえば、AがBに5,000万円を貸し付けるにあたり、Bが
   所有する甲土地に抵当権の設定を受けるとともに、CをBの保証人として
   いた場合は、CがAに弁済をすれば、Aが設定を受けた抵当権がCに移転
   します。弁済による代位には、法定代位と任意代位の2種類があります。

  ◇弁済の提供

   ◇弁済の提供とは

    弁済の提供とは、債務者が給付を実現するために必要な準備をして、
    債権者の協力を求めることをいいます。弁済の提供は、原則として
    債務の本旨に従った現実の提供であることが必要ですが、一定の場合に
    は口頭の提供で足ります。

   ◇現実の提供

    現実の提供とは、債権者が目的物を受け取る以外に何もする必要がない
    ほどの提供をすることです。

   ◇口頭の提供

    口頭の提供とは、債務者が現実の提供をするのに必要な準備を完了して、
    債務者に受領するよう催告することです。債権者があらかじめ目的物の
    受領を拒んでいるとき、または債務の履行について債権者の行為が必要
    なときは、現実の提供は必要なく、口頭の提供で足ります。「債務の
    履行について債権者の行為が必要なとき」の例として、取立債務の場合
    があげられます。

   ◇弁済の提供の効果

    債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずる一切の
    責任を免れます。具体的には、次に示すとおりです。

    ◇弁済の提供の効果

     ①債務不履行責任を負わない
     ②双務契約において、同時履行の抗弁権を失わせる
     ③危険負担において危険が移転し、債権者主義となる
     ④約定利息が発生しない
     ⑤善管注意義務が軽減される
     ⑥弁済費用が増加した場合の増加費用が債権者の負担となる

  ◇債権の準占有者に対する弁済

   ◇債権の準占有者に対する弁済

    債権の準占有者に対する弁済とは、債権者ではないが債権者らしい外観
    をしている者(準占有者という)に弁済することです。

   ◇債権の準占有者に対する弁済の要件および効果

    債権の準占有者に弁済をした者が、弁済時に善意であり、かつ過失が
    なかったときは、弁済は有効となります。その結果、債務は消滅し、
    債務者は政務を免れます。

  ◇供託

   供託とは、債務者が弁済すべき物を債権者のために供託所に寄託して
   債務を免れる行為のことです。債務者は、①債権者が弁済の受領を拒み、
   または受領が不能な場合、または、②弁済者が過失なく債権者を確知でき
   ない場合に供託をして、債務を消滅させることができます。

  ◇代物弁済

   代物弁済とは、本来の給付とは異なる他の給付を現実にすることによって、
   本来の債権を消滅させる、債権者と弁済者間の契約のことです。
   たとえば、AがBに100万円の貸金債権を有している場合に、その返済
   に代えてB所有の自動車をAに引き渡す旨の契約をAとBとの間でし、
   BがAに自動車を引き渡せば、Aの貸金債権は消滅します。
   代位弁済は、①実在する債権について、②本来の給付に代えて、③本来の
   給付とは異なる他の給付を現実に行い、④債権者がこれらを承諾している
   ときに、弁済と同一の効力、すなわち債権の消滅が認められます。

 ◎相殺

  相殺は、当事者間の債権が相殺適状にあり、相殺が禁止されていない場合に
  行うことができる。

  相殺とは、債権者と債務者とが相互に同種類の債権を有する場合に、その
  債権を対当額において消滅させる一方的な意思表示をいいます。
  相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によって行います。相手
  方の同意や承諾は不要です。
  なお、当事者間の法律関係が不安定となるため、相殺の意思表示に条件を
  つけることはできません。また、相殺には遡及効があるため、期限をつける
  こともできません。
  相殺を行うと、対立する債権債務は、相殺適状が生じた時にさかのぼって
  対当額の範囲で消滅します。

 ◎相殺の要件

  相殺は、①当事者間の債権が相殺適状にあり、②相殺が禁止されていない
  場合に行うことができます。

  ◇当事者間の債権が相殺適状にあること

   ◇債権が対立していること
    二人が互いに債権を持ち合うこと

   ◇双方の債権が同種の目的をもつこと
    同種の目的とは、双方の債権がともに金銭債権である場合などをいう。
    目的が同種があればよいので、債権の履行期や履行地が同一であること
    は必要ない

   ◇自働債権が弁済期にあること
    民法の条文では双方の債権が弁済期にあることが要求されているが、
    自働債権さえ弁済期にあれば、受働債権の弁済期はまだ到来していなく
    ても、期限の利益を放棄して相殺することができる

   ◇債務の性質が相殺を許すこと

    たとえば、自働債権に、同時履行の抗弁権や保証人の催告・検索の抗弁権
    などがついている場合に、相殺は許されない

  ◇総裁が禁止されていないこと

   相殺は、①当事者間の特約(相殺禁止特約という)や、②法律の規定によっ
   て禁止されている場合があります。
   たとえば、不法行為によって生じた債権を受働債権とする相殺は、被害者に
   現実の救済を受けさせるべきであること、また、不法行為の誘発を防止する
   ことを理由に禁止されています。























◆債権の確保の方法

 債権の確保の方法には、いろいろな方法があります。
 (詳細→「債権の確保とは・・」


 

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(記事作成日、平成29年3月6日)



 

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