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民法:物権の種類とは・・


物権は、直接的、排他的な権利なので、その種類を限定して内容を明確に
しないと取引上困ります。

そこで、法律で認められていない新しい物件や、法律の規定と異なる内容の
物権を当事者の合意によって創立することは、原則としてできないと
されています。

これを物権法定主義と言います。


民法上の物権を大きく分けると、本権と占有権に分けられます。

本権とは、占有を法律上正当なものとならしめる実質的権利のことを
言います。
占有権とは、物を事実上支配しているということ、それ自体を保護するための
権利になります。

本権は、さらに所有権、制限物件に分けることができます。

所有権とは、物を全面的に支配し、その物を自由に利用、収益、処分できる
物権のことを言います。
制限物件とは、物の利用、収益、処分のどれかについて一定の制限が
設けられている物権のことを言います。

制限物件は、さらに用益物権と担保物件に分けることができます。

用益物権とは、物の使用価値を支配する権利のことを言います。
担保物権とは、物の交換価値を支配する権利のことを言います。

用益物権には、地上権、永小作権、地役権、入会権があります。
担保物件には、留置権、先取特権、質権、抵当権があります。


◆占有権とは

 たとえば、私たちは、普段通勤や通学に使用している定期券を自分のために
 使う意識をもって所持しています。仮に他人の定期券を拾った者が警察に
 届けず、違法に使用していたとしても、その者の自分のために使う意思を
 もって所持していることに変わりはありません。このように、占有とは、
 自己のためにする意思をもって物を所持する状態を言います。

 そして、占有権とは、占有(自己のためにする意思をもって物を所持)する
 ことで成立する権利を言います。

 ただ、物を所持すると言っても、物理的な意味で実際に携帯している必要は
 ありません。次にみるように、代理人によっても占有権は取得することが
 できます。

 ◎占有の方法

  占有は、まず、所有の意思があるかどうかによって二つに分類されます。

  所有の意思をもってする占有を自主占有といいます。たとえば、自己の
  所有する家屋を賃貸し、引き渡した不動産の所有者は、その建物を
  自主占有しているといえますし、物を盗んだ人もその盗んだ物を自主占有
  しています。

  これに対し、所有の意思のない占有を他主占有といいます。
  たとえば、物の賃借人や他人の物を預かっている者(受寄者という)が
  これにあたります。

  次に、占有は、誰による占有かで二つに分類されます。

  占有者本人が自ら物を物を所持する場合を自己占有といいます
  (直接占有ともいう)。

  これに対し、本人が代理人の占有を通じて取得する占有を代理占有と
  いいます(間接占有ともいう)。

  なお、代理人によって占有をしている場合は、その代理権が消滅した
  だけでは代理人の占有権は消滅しません。占有しているという事実状態は
   残っているからです。

 ◎占有権の効力

  占有権を有する者は、占有物から生じた利益を得ることができるほか、
  占有を他人に侵害された場合には排除等を行うことができます。

  ◇果実の収取権

   善意の占有者は果実を収取する権利があります。これに対し、
   悪意の占有者は、果実を収取する権利がなく、収取した果実を返還する
   などの義務を負います。

 ◎占有訴権

  たとえば、知人から預かり自宅で保管していた絵画を無断で外に持ち出そう
  としている者に対して「やめろ」と言えるのは当然のことです。
  このように、占有が侵害された場合に、その占有の侵害の排除を請求する
  権利を占有訴権と言います。

  占有訴権には、①占有保全の訴え、②占有保持の訴え、③占有回収の訴え
  の3つがあります。

  ①占有保全の訴え

   占有保全の訴えとは、占有者が占有を他人に侵害されるおそれがある
   場合に、予防または損害賠償の担保を請求することをいいます。

  ②占有保持の訴え

   占有保持の訴えとは、占有者が占有を他人に妨害された場合に、
   妨害の停止および損害賠償を請求することをいいます。

  ③占有回収の訴え

   占有回収の訴えとは、占有者が占有を他人に奪われた場合に、
   物の返還および損害賠償を請求することをいいます。


◆所有権

 所有権とは、法令の制限内で、自由にその所有物の使用、収益および処分を
 する権利をいいます。

 たとえば、自分が所有している土地は、他人の干渉を受けず自由に使え、
 他人に自由を売却することもできるのが原則です。ただし、まったく自由と
 いうわけではなく、「法令の制限内」という限界があります。たとえば、
 一定の地域にある土地には都市計画法などの法令により都市計画に適合した
 土地の使用が求められることが、その例としてあげられます。

 また、次に説明する相隣関係に関する民法の規定も、所有権を制限する規定の
 一つということができます。

 ◎相隣関係

  土地が隣り合っていれば、一方が改築工事を行ったり、一方から他方に
  植木の枝が伸びてきたりして、それぞれの所有者の間にさまざまな関係が
  生じます。このような隣接する土地の所有者相互の関係を相隣関係と
  いいます。民法には、相隣関係を調整するための規定が定められています。

  ◇隣地使用権

   土地の所有者は、隣地との境界の近くで建物を築造し、または修繕する
   ため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができます。
   ただし、住家に立ち入るには、隣人の承諾が必要です。

  ◇公道に至るための他の土地の通行権

   他の土地に囲まれて公道に通じていない土地(袋地という)の所有者は、
   公道に出るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することが
   できます。これを、公道に至るための他の土地の通行権といいます。
   通行する場所および方法は、通行権を有する者のために必要であり、
   かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶ必要があります。
   そして、通行権を有する者は、必要があるときは自分の費用をもって、
   通路を開設することができます。

  ◇自然水流に対する妨害の禁止

   土地の所有者は、隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはなりません。
   水はけが悪いと、地盤の崩壊など大災害の原因となりかねないため、
   低地の所有者に水はけを妨害することを禁じたのです。

  ◇竹木の枝の切除および根の切取り

   民法は、隣地から竹木の枝や根が境界線を越えて自己の土地に出ている
   場合の処理についても定めています。
   隣地の竹木の「枝」が境界線を越えている場合、その竹木の所有者に
   その枝を切除させることができます。
   隣地所有者の承諾を得ずに切り取ってはいけません。
   これに対し、竹木の「根」が境界線を越えている場合、自らその根を
   切り取ることができます。つまり、隣地所有者の承諾を得ずに
   切り取ってもよいのです。

 ◎遺失物および無主物の取扱い

  遺失物は、遺失物法の定めに従い、公告をした後3ヶ月以内にその所有者が
  判明しない場合は、取得した者がその所有権を取得します。
  また、所有者のない動産(無主物)は、所有の意思をもって占有した者が
  所有権を取得します。これに対し、所有者のない不動産は、国の財産
  つまり国庫に帰属することになります。  

 ◎共有

  ◇共有とは

   共有とは、一つの物を、複数の人で所有することを言います。共有に
   おける各共有者は、共有の目的物に一定の割合で権利を持ちます。
   持分は、各共有者の個別の権利ですから、各自が自由に処分することが
   できます。

  ◇共有物の使用

   各共有者は、共有物の全部について、その持分の割合に応じた使用をする
   ことができます。

  ◇共有物の管理など

   各共有者は、共有物を保存し、利用し、改良し、変更を加えることが
   できます。このうち、利用行為をおよび改良行為を管理行為といいます。
   これらのうち保存行為だけは、他の共有者の利益にもなるので、
   各共有者が単独で行うことができます。

  ◇管理費用の負担

   各共有者は、その持分に応じて、管理費用を負担します。したがって、
   持分割合の大きな共有者は、他の共有者に比べて多くの管理費を
   負担します。

  ◇共有物の分割

   目的物を複数の者で所有する共有関係は、単独所有と比べてトラブルが
   起こりやすくなります。そこで、民法は、原則としていつでも単独所有の
   状態に戻すことを認めています。
   つまり、各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます。
   ただし、5年を超えない期間内は、分割をしないという特約(不分割特約
   という)をすることができます。この不分割特約は、更新することが
   できますが、更新の時から5年を超えることができません。
   共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を
   裁判所に請求することができます。

  ◇共有者の持分放棄および共有者の死亡

   持分はこれを自由に処分できるので、持分を放棄することも可能です。
   また、共有者が死亡することもあるでしょう。このように、共有者の
   一人が持分を放棄したとき、または死亡して相続人がいないときは、
   その持分は他の共有者に帰属します。

◆用益物権

 民法上の用益物権には、①地上権、②永小作権、③地役権、④入会権が
 あります。

 用益物権とは、他人の物を利用することを内容とする物権をいいます。

 ◎用益物権の内容と具体例

  ◇地上権

   工作物または竹木を所有するため、他人の土地を利用する物件。
   具体例としては、建物、トンネル、橋などを所有するため他人の土地を
   利用させてもらう場合

  ◇永小作権

   耕作または牧畜を行うため、他人の土地を利用する物権。小作料の
   支払いが要件。具体例としては、他人の土地で農業を行う場合。

  ◇地役権

   ある土地の利用価値を高めるため、他人の土地を利用する物権。
   地役権を設定することにより利用価値が高まる(地役権の便益を受ける)
   土地を要役地、地役権が設定された他人の土地を承役地という。
   具体例としては、通行のための地役権、眺望のための地役権。

  ◇入会権

   一定の地域に居住する住民が、団体として山林や用水等を支配する物権。
   共益のような持分権や分割請求はない。
   具体例としては、ある山林を一定の村落が林業に利用する等。














 

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(記事作成日、平成29年4月6日)



 

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