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◆人権の保障と限界
基本的人権は、最大限保障されるべきであるが、公共の福祉による制約を受け
る。
◎人権の種類
人権は、自由権、社会権、参政権および受益権(国務請求権)の4種類に分類
されます。
◇人権の種類
◇自由権
意味は、国家が個人の領域に権力をもって介入することを排除して、個人
の自由な活動を保障する権利です。
自由権はさらに、精神的自由権、経済的自由権および人身の自由に分かれ
る。
◇社会権
意味は、社会的・経済的弱者が「人間に値する生活」を営むことができる
ように、国家の積極的な配慮を求めることができる権利です。
社会権の例として、生存権や教育を受ける権利があげられる。
◇参政権
意味は、国民が国政に参加することのできる権利です。
自由権を確保するためには、国民が政治に参加することが必要なため、
参政権が認められている。
◇受益権
意味は、国民が国家に対して一定の行為を請求することができる権利で
す。
受益権の例として、裁判を受ける権利や国家賠償請求権などがあげられ
る。
◎人権の享有主体
人権は、人である以上当然に有する権利です。しかし、日本国憲法は「国民
の権利義務」という言葉を使い、人権を保障される対象(人権の享有主体)
を「国民」に限るかのように読めます。一方でわが国には、日本国籍を有す
る者と外国人、自然人と法人など、さまざまな「人」がいます。以下、人権
の主体となるかが問題となるものについて説明します。
◇天皇および皇族
天皇や皇族は、日本国籍を有する自然人です。人権は人であることにより
有するとされるものですから、天皇や皇族にも保障されます。
しかし、天皇は日本国の象徴であり、特殊な職務を担っており、皇位は
世襲されます。また、皇族も天皇に準じ、特殊な職務を担っています。
したがって、人権の享有につき制限を受けることがあります。
◇法人
人権は、もともとは自然人を対象とするものですが、法人は、現代社会で
社会経済活動を行う存在として、大きな役割を果たしていますから、可能
な限り人権を認めるべきです。判例も、性質上可能な限り、法人に人権規定
を適用するとしています。
ただし、法人は自然人と異なり、生命や身体をもたないため、これらを前提
とする権利は認められません。
◇重要判例
◇八幡製鉄事件
株式会社の代表取締役が、政党に政治献金をした行為について、同社
の株主から責任を追及された事件
◇判示
憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能
なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解するべきであるから、
会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進
しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである
◇外国人
外国人は、日本国籍を有さないので、国民には含まれません。しかし、人権
は人であることにより有するとされるものです。したがって、日本国民に
限って認められるものと考えらえる人権以外は、外国人にも保障されます。
◇重要判例
◇マクリーン事件
アメリカ人マクリーンが、在留期間を1年としてわが国に入国し、
1年後にその在留期間の延長を求めて更新の申請をしたところ、法務
大臣が、在留中にマクリーンが政治活動を行ったことを理由に更新を
拒否し、その適否が争われた事件
◇判示
憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本
国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に
在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである
◇出入国の自由
入国の自由は、外国人に当然には保障されません。国際慣習法上、各国の
裁量に委ねられています。
これに対し、出国の自由については、判例は、外国人の出国の自由を、
22条に定める外国移住の自由として保障されるとしています。
さらに、再入国の自由については、判例は、わが国に在留する外国人は、
外国へ一時旅行する自由を憲法上保障されているものではないとして、
再入国の自由は認めていません。
◇政治活動の自由
外国人に政治活動の自由は認められるでしょうか。
政治活動は政治的な表現活動ですから、表現の自由という精神的自由権の
側面から考えると、日本人か否かを問わず保障されるべきであるとも考え
られます。しかし、政治活動には参政権的な側面もあり、無制限に認める
ことは、国民主権との関係で問題が生じます。
この両者の調整の観点から、判例は「わが国の政治的意思決定又はその
実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが
相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」と判示しています。
◇参政権
外国人は、国政選挙についても地方選挙についても、憲法上参政権は
保障されていないとするのが判例です。すなわち、「公務員を選定し、
及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とされていますが、
この権利は、権利の性質上日本国民のみを対象とし、わが国に在留する
外国人には及ばないと判示しています。
ただし、憲法は第八章で地方自治について定めており、そこでは、住民
の日常生活に密接な関連を有する事務については、住民自治に基いて
処理することを制度的に保障しています。そして、地方選挙について
「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、
その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」と定めています。
そこで、判例は、この「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を
有する日本国民を意味するが、わが国に在留する外国人のうちでも永住
者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を
もつものについて、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員
等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されている
ものではないと判示しました。
◇重要判例
◇定住外国人地方参政権事件
日本に永住資格をもつ在日韓国人である原告らが、居住地の各選挙
管理委員会に対して、選挙人名簿に登録することを求めたが、却下
されたため、この却下決定の取消しを求め提起した事件
◇判示
①公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は、
権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利
の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解する
のが相当である
②国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨
に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を
成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう
「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民
を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に
在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員
等の選挙の権利を保障したものということはできない
③我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住
する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと
認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関係を
有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、
法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する
選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されている
ものではないと解するのが相当である
◎人権の限界
基本的人権は、最大限保障されるべきです。ただ、人は自分の人権を尊重して
もらいたければ、他者の人権にも配慮をしなければなりません。たとえば、
いくら事実であるからといって、他人の名誉や信用を損なうようなことを
無制約に公言することは許されません。表現の自由が発言する者にある反面、
名誉や信用など、法律上保護を受けるべき権利や利益が他者にあるからです。
他人の名誉や信用を損なうような表現を制約なく行う自由など存在しません。
その意味で、人権といえども、まったく無制約なものではなく、他者の人権
との調整のうえで制約を受けるのです。
◇公共の福祉
◇内在的制約
基本的人権の制約について、憲法では次のように規定されています。
まず、12条では、国民は、基本的人権を「公共の福祉のために」利用
する責任を負うと定めています。また、幸福追求権を定める13条は、
幸福追求権は、「公共の福祉に反しない限り」、国政のうえで最大の
尊重を要すると定めています。
このように、基本的人権は、公共の福祉による制約を受けます。ただし、
基本的人権は、最大限尊重されるため、その裏返しとして、公共の福祉
によって「必要最大限の制約」しかできないとされています。
◇憲法12条
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつ
て、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用しては
ならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を
負ふ。」
◇憲法13条
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に
対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他
の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
◇公共の福祉の意味
公共の福祉の意味については、三つの学説が対立しています。
◇公共の福祉の意味
◇一元的外在制約説
基本的人権は、すべて「公共の福祉」によって制約される。22条
および29条の「公共の福祉」という文言に特別の意味はない
◇内在・外在二元的制約説
「公共の福祉」による制約が認められる人権は、その旨が明文で定め
られている経済的自由権(22条、29条)および国家の積極的施策
によって実現される社会権に限定され、その他の権利・自由は内在的
制約に服するにとどまる
◇一元的内在制約説
「公共の福祉」は、人権相互の矛盾衝突を調製するための実質的公平の
原理であり、すべての人権に論理必然的に内在している。そして「公
共の福祉」は、自由権を各人に保障するための制約を根拠づける場合
には、必要最小限度の規制のみを認め、社会権を実質的に保障する
ために自由権の規制を根拠づける場合には、必要な限度の規制を認め
るものとしてはたらく
◇特別の法律関係
在監者(刑事施設の被収容者)や公務員は、法人や外国人と異なり、人権の
享有主体であることは間違いありませんが、普通の人とは異なる、特別な
立場や地位に置かれています。こうした公権力と特殊な関係がある者には
特別な人権制限がなされます。
◇在監者の人権
在監者は、公権力により強制的に拘束されている特殊な法律関係にあり
ます。在監者の人権制限が正当化される根拠は、憲法自身が在監関係を
認めており、当然に一般国民とは異なる制約を予定しているという点で
す。つまり、憲法は国家による刑罰を認め、その具体化として在監関係
を認めている以上、在監者の身体が拘束され、その他の自由も制限を
受けることはもともと憲法が予定しているのだということです。
在監者の基本的人権を制限することは認められますが、その制限は、
在監目的を達成するための必要最小限のものにとどまります。なお、
同じ在監者であっても、受刑者と未決拘禁者とでは、拘禁の目的が異な
りますから、制限される内容が異なるとされています。
未決拘禁者について判例は、次のように判示しました。
◇重要判例
よど号ハイジャック新聞記事抹消事件
東京拘置所に勾留されていた左翼活動家の原告らが、拘置所内で読売
新聞を私費で定期購読していたが、同拘置所長が、よど号乗っ取り
事件に関する記事を墨で塗りつぶして配布したため、同処分は違法で
あるとして国家賠償請求を求めた事件
◇判示
未決勾留により監獄に拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の
自由についても、逃亡及び罪証隠滅の防止という拘留の目的のため
のほか、監獄内の規律及び秩序の維持のために必要とされる場合に
も、一定の制限を加えられることはやむをえないものとして承認し
なければならない。しかしながら、未決勾留は、刑事司法上の目的
のために必要やむをえない措置として一定の範囲で個人の自由を
拘束するもんであり、他方、これにより拘禁される者は、当該拘禁
関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての
自由を保障されるべき者であるから、監獄内の規律及び秩序の維持
のためにこれら被拘禁者の新聞紙、図書等の閲読の自由を制限する
場合においても、それは、刑事司法上の目的を達するために真に
必要と認められる限度にとどめらえるべきものである。
◇公務員の人権
公務員の人権も、一般国民とは異なる制約を受けます。その制約の根拠
は、憲法が公務員という存在を予定していることから、公務員であるが
ゆえの制約を受けると考えるからです。
公務員の人権制限として問題となるのは、政治活動の自由と労働基本権
です。
◇公務員の政治活動の自由
公務員の政治活動は、国家公務員法102条1項および人事院規則
14-7により、一律に禁止されています。
議員内閣制の下では、行政の職務の中立性が保たれていてはじめて、
政策が忠実に実行され、行政の継続性が維持できます。そこで、公務
員の政治活動の自由を制限する必要があるのです。
ただし、公務員といっても、一般の勤労者であり市民であることは、
私たちと変わりありません。そこで、政治活動の自由に対する制約も、
必要最小限の制約であることが必要です。必要最小限の制約といえる
ためには、①制約の目的が正当であること、②目的達成の手段として
必要最小限の制約であることの二つが必要とされていいます。
この点につき判例は、次のように例示しました。
◇重要判例
猿払事件
猿払村の郵便局員が、選挙用ポスターを公営掲示板に掲示したなど
の行為が、国家公務員法102条および人事院規則14-7に違反
するとして起訴された事件
◇判示
公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員の政治的行為を
禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどま
るものである限り、憲法の許容するところであるといわなければ
ならない。
国公法102条1項及び規則による公務員に対する政治的行為の
禁止が右の合理的で必要やむをえない限度にとどまるものか否か
を判断するにあたっては、禁止の目的、この目的と禁止される
政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られ
る利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から
検討することが必要である。
◇公務員の労働基本権
公務員の労働基本権の制約は、公務員であるがゆえの制約です。
公務員の職種の違いにより、労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)
の全部または一部が、次の表に掲げるとおり、制限されます。
◇憲法規定の私人間効力
憲法は、人権が国家権力によって侵害されてきたという歴史的事実から、
国家権力によって人権が侵害されないように、人権保障規定を置くに至り
ました。つまり、憲法はもともと、国家と私たち私人との間を規律する
公法であるといえます。
しかし、現代においては、私人のなかにも、人権を侵害する社会権力とし
て、巨大な資本と情報力を有する私的団体が登場してきました。そこで、
憲法の規定が、私人間にも適用されるのではないかということが問題と
なります。
この憲法規定の私人間効力については、三つの考え方があります。
◇私人間効力についての考え方
◇無効力説
憲法の規定は、私人間には適用されない。
◇直接適用説
憲法の人権規定は、私人間に直接適用される。
◇間接適用説
憲法の趣旨、目的ないし法文から直接的な私法的効力をもつ人権規定
を除き、私人間効力を認めないが、法律の概括的条項、特に公序良俗
に反する法律行為は無効であるとする民法90条のような一般条項を、
憲法の趣旨を取り込んで解釈・適用することによって、間接的に
私人間の行為を規律すべきである。
◇重要判例
三菱樹脂事件
被告に採用された原告が、在学中の学生運動暦について入社試験の際に
虚偽の申告をしたという理由で、3ヶ月の使用期間終了時に本採用を
拒否されたため、その適否が争われた事件
◇判示
①憲法の右各規定(19条、14条)は、同法第三章のその他の自由権
的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して
個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら
国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の
関係を直接規律することを予定するものではない
②私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為
に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を
尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を越える侵害に対し基本的
な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存す
るのである。
日本国憲法の三大原則に基本的人権の尊重があります。
基本的人権とは、人が生まれながらにして持っている権利のことです。
単に、人権とよばれることもあります。
◆憲法11条
「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。
この憲法が保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、
現在及び将来の国民に与へられる。」
基本的人権の尊重は、上記の権利を最大限に尊重し、
侵すことのできない永久の権利として日本国憲法に規定されています。
◆基本的人権の有する性質
◎人権の固有性
人権は、憲法や天皇からいわば恩恵として与えられたものでなく、
人間であることにより当然に有するものとされる権利になります。
◎人権の不可侵性
人権は、原則として公権力によって侵されない権利になります。
◎人権の普遍性
人権は、人種、身分、性などの区別に関係なく、
人間であるというだけで当然にすべて享有できる権利になります。
◆人間の尊厳性と基本的人権
◎憲法第13条
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に
対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、
立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
日本国憲法が保障している基本的人権は、人間が自律的な一個人として、
自由と生存とを確保し、これによって尊厳性を維持するため、
必要な権利が当然に人間に固有の権利として存在することを
前提として認めるものになります。
つまり、基本的人権は、人間として固有の尊厳に由来するものになります。
このような人間の尊厳の原理は、個人の尊厳の原理とも言われ、
日本国憲法は、個人の尊重を宣言しています。
◆基本的人権の種類
基本的人権の種類としては、大きく5種類に分けることができます。
・平等権
・自由権
・社会権
・参政権
・受益権
◎平等権
すべての日本国民は、法の下の平等であって、性別や人種、思想によって
差別を受けることのない権利を持っているということです。
(詳細は→「平等権とは・・」)
◎自由権
自由権とは、法律に反しない限り、国民の自由が保障されていることを
言います。(詳細は→「自由権とは・・」)
◎社会権
社会権とは、人間らしい生活を国が保障する権利を言います。
(詳細は→「社会権とは・・」)
◎参政権
◇憲法15条1項
「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」
参政権とは、国民が直接、または政治家を通じて間接的に政治に
参加する権利のことを言います。
その例として、選挙権、被選挙権などがあげられます。
参政権は、憲法の基本原理である国民主権および民主主義を実現するため、
不可欠な基本的人権です。
日本国憲法の前文では、国民に主権があるとして民主主義を
人類普遍の原理として掲げていますが、
参政権は、そのために必要不可欠な権利といます。
参政権のうち、最も一般的に重要なものは、議員を選挙する選挙権です。
◎受益権(国務請求権)
受益権とは、国民が国家に対して、一定の給付、または行為を要求する
権利をいいます。
日本国憲法では、請願権、裁判を受ける権利、国家賠償請求権、
刑事補償請求権が認められています。
(詳細は→「受益権とは・・」)
◆基本的人権の保護の限界とは・・
ただし、社会生活において、すべての人の基本的人権を保障するためには、
一定の制約を課すことが必要になります。
(詳細は→「基本的人権の保護の限界とは・・」)
◆包括的基本権と法の下の平等とは・・
◎生命、自由、幸福追求権
◇包括的基本権
日本国憲法に規定される人権規定は、歴史的に国家権力に侵害される
ことが多かった重要な権利や自由を列挙したものにすぎず、
すべての人権を網羅して掲げたものではありません。
また、憲法制定時と現在とでは、社会情勢や国民の考え方に
大きな変化があります。それに伴い生じた諸問題について、
憲法に明文がないからといって、法的に対応しないというのでは、
憲法が掲げる「個人の尊重」を全うすることはできません。
そこで、憲法が明文で規定していなくても、保障すべき人権があると
考えられます。
これが新しい人権という概念になります。
憲法は、歴史上重要な権利については、14条以下で具体的に規定を
置いて保障していますが、これらに含まれてない新しい権利についても、
13条後段により、人権として保障されることがあります。
◇幸福追求権とは
憲法13条
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に
対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、
立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
つまり、13条にいう「幸福追求権」は、憲法に列挙されていない
新しい人権の根拠となる、一般的かつ包括的な権利と言えます。
◇新しい人権とは
新しい人権の代表的なものに、プライバシー権と自己決定件があります。
①プライバシー権
プライバシーの権利について、最高裁は明確に内容を提示して
いませんが、一つひとつの事件のなかで保障されるか否かを
判示しています。
◇宴のあと事件
いわゆるプライバシー権は、私生活をみだりに公開されない
法的保障ないし権利として理解される
→個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという自由権的、
消極的なもの
◇通説
プライバシー権とは、自己に関する情報をコントロールする権利
をいい、自由権的側面のみならず、プライバシーの保護を
公権力に対して積極的に請求していくという請求権的、
積極的側面も有する
②自己決定権
自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を、
公権力の介入や干渉を受けることなしに各自が自律的に決定できる
権利をいい、憲法上の具体的な権利として位置づけられます。
たとえば、ライフスタイルを決める自由、家族のあり方を決める
自由や医療拒否など生命の処分を決める自由などが、
これにあたります。
③その他の新しい人権
その他の新しい人権として、肖像権、環境権、日照権、嫌煙権、
アクセス件などが主張されています。
◆人権の享有主体
人権は、人である以上当然に有する権利になります。
しかし、日本国憲法は「国民の権利義務」という言葉を使い、
人権を保障される対象(人権の享有主体)を「国民」に限るかのように
読めます。
一方で、わが国には、日本国籍を有する者と外国人、自然人と法人など、
さまざまな「人」がいます。
以下、人権の主体となるかが問題となるものについて記載します。
◎天皇および皇族
天皇や皇族は、日本国籍を有する自然人になります。
人権は人であることにより有するとされるものですから、
天皇や皇族にも保障されます。
しかし、天皇は日本国の象徴であり、特殊な職務を担っており、
皇位は世襲されます。
また、皇族も天皇に準じ、特殊な職務を担っています。
したがって、人権の享有につき制限を受けることが受けることが
あります。
◎法人
人権は、もともと自然人を対象とするものですが、
法人は、現代社会で社会経済活動を行う存在として、
大きな役割を果たしていますから、
可能な限り人権を認めるべきです。
判例も、性質上可能な限り、法人に人権規定を適用するとしています。
ただし、法人は自然人と異なり、生命や身体を持たないため、
これらを前提とする権利は認められません。
◎外国人
外国人は、日本国籍を有さないので、国民には含まれません。
しかし、人権は人であることにより有するとされるものです。
したがって、日本国民に限って認められるものと考えられる人権以外は、
外国人にも保障されます。
◇出入国の自由
入国の自由は、外国人に当然には保障されません。
国際慣習法上、各国の裁量に委ねられています。
これに対し、出国の自由については、判例は、外国人の出国の自由を、
22条に定める外国移住の自由として保障されるとしています。
さらに再入国の自由については、判例は、わが国に在留する外国人は、
外国へ一時旅行する自由を憲法上保障されているものではないとして、
再入国の自由は認めていません。
◇政治活動の自由
外国人に政治活動の自由は認められるでしょうか。
政治活動は政治的な表現活動ですから、表現の自由という
精神的自由権の側面から考えると、日本人か否かを問わず
保障されるべきであるとも考えられます。
しかし、政治活動には参政権的な側面もあり、
無制限に認めることは、国民主権との関係で問題が生じます。
この両者の調整の観点から、判例は「わが国の政治的意思決定
又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみ
これを認めることが相当でないと解されるものを除き、
その保証が及ぶ」と判示しています。
◇参政権
外国人は、国政選挙についても、地方選挙についても、
憲法上参政権は保障されていないとするのが判例になります。
すなわち、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、
国民固有の権利である」とされていますが、この権利は、
権利の性質上日本国民のみを対象とし、
わが国に在留する外国人には及ばないと判示しています。
ただし、憲法は第八章で地方自治について定めており、
そこでは、住民の日常生活に密接な関連を有する事務については、
住民自治に基づいて処理することを制度的に保障しています。
そして、地方選挙について「地方公共団体の長、その議会の議員
及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、
直接これを選挙する」と定めています。
そこで、判例は、この「住民」とは、地方公共団体の区域内に
住所を有する日本国民を意味するが、わが国に在留する外国人の
うちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と
特段に密接な関係をもつものについて、法律をもって、
地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を
講ずることは、憲法上禁止されているものではないと判示しました。
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(記事作成日、平成29年3月7日)